研究課題/領域番号 |
25600149
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
小川 奏 独立行政法人理化学研究所, 放射光科学総合研究センター, 特別研究員 (80634352)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 非線形光学 / 位相補償 |
研究概要 |
フェムト秒電子バンチのバンチ長をEOサンプリング法によって計測するための超広帯域プローブ光開発を行っている。 本年度は、ハイパワー発振器とフォトニック結晶ファイバー(PCF)を用いて超広帯域光を発生させ、音響光学素子とパルスストレッチャーによって波形整形と分散制御を行った。まず何種類かのPCFに対して広帯域光発生の実験を行い、最適なPCFを選定した。この結果、コア径サイズ5umまたは8umで、250nmを超える帯域を持つ超広帯域プローブ光の発生に成功した。さらにこのプローブ光を分光器で計測しながら音響光学素子に与えるパラメータを調整し、全帯域にわたってフラットな波長スペクトルを得ることに成功した。また、線形な波長分散を得るために、プリズムとグリズムを用いた位相補償器を開発した。以上の結果から、超高分解能EOサンプリングに適したプローブ光の生成に成功した。 また、このプローブ光を増幅するため励起光の整備を行った。得られたプローブ光のパルス幅は300fs程度であるので、このパルスを効率よくまた安定して増幅させることができるよう、パルス幅80psの波長532nmのNd:YAGレーザーを導入した。この励起用レーザーはプローブ光の発振器と同様に238MHzのRF信号に同期させることが可能であり、これにより励起光とプローブ光の時間ゆらぎを抑制し、安定した増幅が見込める。今後はこの励起レーザーを用いて増幅実験を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的であるEOサンプリング法を用いた高分解能電子バンチ計測に必要な超広帯域プローブ光開発には、重要な2つの開発要素がある。これは、分散とスペクトルが制御された超広帯域プローブ光生成と超広帯域プローブ光の増幅という2つの要素であるが、このうち超広帯域プローブ光生成は達成された。この各要素技術開発はそれぞれ1年ずつ段階的に行う予定であったことから、計画は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は励起レーザーを用いてプローブ光のパルス幅を10 uJまで増幅する。この時、スペクトル形状と帯域幅を維持した増幅が大きな課題である。このため、波長450 nmの励起光開発を行う。これは超広帯域光から一部900 nmの成分を切り分けて増幅し、2倍高調波発生によって生成可能である。また、450 nmの励起光を用いて増幅を行う際は、可能な限り少ない増幅段で所定の増幅帯域とパルスエネルギーが得られるようにするため、OPA 結晶の角度の調整や励起光の波長帯域の最適化などを、増幅計算などとも併せて検証し、実験を行う。 また 増幅した超広帯域光パルスの時間計測と位相計測を行い、時間波形とチャープの線形性を計測してシステムの完全性を検証する。検証結果は論文や学会を通じて広く発信していく。
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