研究課題/領域番号 |
25600156
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
前園 涼 北陸先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 准教授 (40354146)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 並列計算 / 電子状態計算 / 高速化 / GPU / モンテカルロ |
研究概要 |
当該モンテカルロ法では、N個の粒子位置がステップ更新の対象となるが、全ての粒子位置を斉次に更新する必要は必ずしも無く、一つ一つを逐次的に更新する方法が一般的に広く採用されている実装である。逐次更新では、着目粒子以外の粒子位置について現段/前段の位置のいずれを採用するかに自由度があり、前段位置を採用することで新たな並列多重度を生み出せる(研究代表者による考案と実証)。平成25年度においては、既にGPUに移植済の逐次更新/倍精度演算コードを基として、「逐次更新/倍精度演算」から「逐次更新/単精度演算」、更に「準斉次更新/単精度演算」と実装開発を進めた。この過程で、「項目1)単精度化による誤差がシミュレーションに要求される化学的精度の範囲に収まるか?」、「項目2)準斉次更新により統計誤差の範囲内で結果が一致するか?」について検証を行った。ノード内のGPU演算コアには、更にブロックやスレッドといった階層性が存在するので、(電子数N) ×(軌道数L)のノード内並列を、ブロックとスレッドに如何に配分するか(スレッディングモデルの設定)について、可能ないくつかの組み合わせが考えられる。そこで、「項目3)加速化因子のスレッディングモデルへの依存性検証」を行い、異なるいくつかのスレッディングモデルに関してコードのチューニングを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度においてコード実装を集中的に行い、コード全般の構造を見直す事で達成目標は全て完遂する事が出来た。この過程においては、本研究での遂行対象に据えたモンテカルロステップ更新部分のみならず、これに続くエネルギー算定部分にまで、当該並列算法の適用を進め、同程度の高速化を達成することが出来た。エネルギー算定部分はステップ更新部分と並立する律速部分であり、実用上の高速化を確保するには、この部分にも並行して新算法を実装することが必要となる。エネルギー算定部分には、ステップ更新部分で開発した根本的な構造改変に加えて、軌道値の評価のみならず、軌道の勾配値や二階微分値の評価が必要となるとなるため、その実装はより煩雑となるが、初年度中の研究内容として、無事、この事項を完遂した。さらに当初の研究計画範囲を更に超えて、「データ構造を改変して、CPU-GPU間で、より高速なデータ転送を実現すること」、及び、「CPU逐次演算向けに逐次的に並んでいたエネルギー各項評価の順番を並列処理向けに組み直したこと」の二点について大きな進展を得て、コード全体の実用性向上に向けて、より高い達成度を実現した。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度においては、「項目4)より少ない電子数をもつ系での加速化測定から、本算法の、適用対象系システムサイズ依存性を検証する」、「項目5)データ転送時間やメモリレイテンシの測定し、理論性能に対し十分な程度を達成しているかを考察する」の各項目を明らかにする、更に、「項目6)リードオンリーメモリの利用有無に関する性能向上が可能かを検証する」といった研究事項を遂行し、これら結果を物理系欧文誌の原著論文にとりまとめる。並行して、北陸先端大保有のGPU搭載の大規模クラスタ計算機や、京スパコンでのノード内資源などを利用し、更に大規模なノード間並列と、メニーコアのノード内並列がよく共存し、ノード間並列度数に応じて性能がリニアに向上するかどうかを検証する。GPUによる加速をインパクトとして主張する場合、マルチコアCPUへの優越性を勘案すると、10倍以上の加速が達成されないと原著論文への成果採録は難しい。GPGPUによる加速達成は一般には容易ではなく、数倍の加速に打ち止まってしまう可能性もある。この場合には、GPUによる加速には拘らず、統計誤差範囲内での一致のみに検証事項を傾注して、準斉次更新法の検証という観点で一旦、成果を原著論文に取りまとめる。GPU上で開発した算法実装をマルチコア/メニーコアプロセッサに移植して、この方向での研究展開に主軸を移す。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の消耗品費残額と、その繰越しについては、当初、執行を予定していた計算機クラスタ購入式数が予定より少なく済んだ事に起因している。これは、別途、学内措置の予算による計算機購入で、これを本研究にも併用する事が可能となったためである。 繰り越し分については、今年度の消耗品費に充当し、繰り越し分も含めた計算資源の増強規模を見据え、計画的に執行する予定である。
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