研究代表差らによって近年提案された、整数の四則演算のみを用いて微分方程式を高い精度で解くことができる手法のさらなる拡充と発展を以下のように行った。 まず、目標であるこの整数型解法の偏微分方程式への拡張について、複雑な「隣接範囲」の問題を扱うために離散数学的手法に基づくアルゴリズム実現の具体的方法を提案し、さらに基底関数の対称性を利用してそれらを改良した。さらに、現実のプログラムへの実装を試みた。残念ながらその構造の煩雑さのためプログラムのバグが取り切れず、研究計画期間内にプログラムの実行を間に合わせることはできなかった。 しかしながら、この研究においては、数多くの副産物が得られ、この研究が古典整数論や超函数論といった当初予想もしなかった分野と深い関連をもつことが次々と明かになり、当初全く想像しなかった意外な方向に研究が大きく発展し始めた。具体的には、この整数型解法と古典整数論の分野の連分数との関連が経験的に判明し、さらにその関連の理由が徐々にわかりはじめたことや、この整数型解法に現れる余剰解の成分の多くが(複素平面で1次分数変換を施したとき)元の座標の無限遠点に対応する点や微分方程式の特異点にサポートを持つ超函数解であることが明らかになったことなどである。 さらに、この整数型解法の正体が、数値解法でありながら解析解法の性格を併せ持つ、整数型の展開係数が満たすべき差分方程式に基づいた一種の数論解法とでも呼ぶべきものになっていることが、次第に明らかになりつつある。 実用的な意味でも、(連分数を用いた工夫により)ごく普通のパソコン程度でシュレーディンガー作用素の固有値を(accuracyの意味で)有効数字数百桁で計算することに成功するなど、比較的少ない計算量で非常に高精度な計算をすることに成功した。
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