研究実績の概要 |
本研究では, 複雑な社会の動きや経済システムの数値解析を行う手法として注目を浴びているマルチエージェントシミュレーション(MAS)にプラズマ物理分野で用いられる粒子法の応用を試みる.粒子法では、空間にランダムに存在する膨大な数の粒子の情報をそれぞれ近くの空間格子点に配分し,その情報をもとに格子システム全体で環境変位を求める. 更新された環境情報は再度各粒子に反映され, それをもとに粒子情報を更新する.この繰り返しにより粒子群とそれらが存在するマクロ環境が自律的に変化する. 本研究では、各粒子をエージェントに置き換えて,エージェントの自己組織化やマクロ環境の相互作用をよりセルフコンシステントに解き進めることにより,マルチエージェントシミュレーションの高機能化および大規模計算を目指す. 26年度は, 代表的なMASとしてSugar Scapeモデルを採用した. まずは, 1次元空間の粒子シミュレーションと対応させるために,個々のエージェントである蟻を多数の粒子に置き換え, また砂糖を1次元空間の各格子点に空間的に分布させた.エージェントは現在位置における砂糖量の空間勾配に比例した力を受け, 砂糖量が多い方向に力を受けるものとし, 各時間ステップにおいて運動方程式を解きエージェントの速度変化および位置変化を逐次解き進める. これを繰り返すことによりエージェント群が時間的にどのような動きをするか確かめその妥当性を検証した. また,各領域とそこに存在するエージェント群を各プロセスに割り当てる領域分割型の並列計算も実施し, 動作確認も行った.
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