研究課題/領域番号 |
25610007
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
徳永 浩雄 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (30211395)
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研究分担者 |
内山 成憲 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (40433172)
内田 幸寛 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (90533258)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 楕円曲面 / 2重切断 / Zariski N組 / Jacobi多様体 / ガロア分岐被覆 |
研究実績の概要 |
本年度は当初研究実施計画をたてた段階では,生成ファイバー上で次数が3以上となる因子を与えるような(有理)楕円曲面上の曲線の幾何学について研究を行う予定であったが,前年に引き続き次数が2となる因子をあたえるような曲線,すなわち,2重切断の幾何学及びその応用のひとつとして「ガロア分岐被覆を利用した平面曲線のトポロジー,低次曲線配置に関するZariskiペア」について研究をおこなった. まず,25年度の段階で得られていた成果のさらなる簡明化につとめた.従来は与えられた曲線全体で分岐する二面体群をガロア群とするガロア分岐被覆の存在・非存在のみを問題としていた. 一方,本研究では,曲線の一部分のみで分岐するものも複数同時に考察するアプローチをとった.そのため,昨年度の段階における定式化では曲線のトポロジーの区別が一見しただけでは見えにくくなっていた.そこで,本年度はこれらを数値化したあらたな不変量を導入し,簡明化することに成功した.これらの研究は坂内真三との共同研究であり,論文はGeometry of biections of elliptic surfaces and Zariki N-plets for conic arrangementsとしてGeometria Dedicataに掲載予定である(電子版はすでに公開). 続いてbisection DとDのアーベルヤコビ写像の像として得られる切断の関係について考察した.これらの成果は現在準備中である. 分担者の内山は.代数幾何学および組み合せ的問題に基づく公開鍵暗号やそれら安全性についての研究を行った. 分担者の内田は.代数曲線とAbel多様体に関する数論アルゴリズムの研究を主に行い,標準的高さの計算の高速化や暗号理論への応用について研究を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3次以上の多重切断については,まだ,研究は準備段階にある.しかしながら,2重切断については,Zariski N-組への応用は一般論及び具体例ともに予定より進んでいると考えられる.とりわけ坂内真三氏との共著の論文においては 1) 2重切断の具体的構成法の明示的な記述を与え,2)平面曲線のトポロジーの(ガロア分岐被覆を用いた)新たな不変量の定式化を行った.その結果,昨年度までの成果をより見通しよくすることに成功している.これらは十分な進展であると考える. また,2重切断とそのアーベルヤコビ写像の像として得られる切断の関係については,像となる切断が単位元を与える切断と交わらないときには,かなり整備された.これについては現在論文を準備中である.さらに有理楕円曲面に2重切断に関しては,研究代表者およびその共同研究者の坂内真三氏により,上記で述べた論文の手法に基づいた計算データが蓄積している. 本課題に関連する論文が本年度は(電子版も含めて)2本出版されていることに加え,関連する成果の口頭発表についても,国内外のセミナーや研究集会を通じて数回おこなっている. さらに研究分担者もそれぞれのテーマにおいて成果を挙げつつある. 以上の状況から,本研究は概ね順調に進展していると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は平成26年度に得られた成果,計算データをもとに以下のテーマについて研究を進めてゆきたい. 1. 平成26年度までに進んだ研究成果に関する論文の執筆を進める.具体的内容としては,1)坂内真三氏との共同研究において導入した不変量を利用して,低次の代数曲線配置のトポロジーに関する論文を執筆する,2)楕円曲面の2重切断に関する研究成果,とりわけ,「ある種のペアリング」に関する成果に関する論文を執筆する,の2点である.これらの2つの内容は相互に関連しており,1つの論文としてまとめることも検討している.この研究成果は本研究課題の重要なテーマの1つであり,今年度中にまとめあげたいと考えている. 2. この2年間の研究を通して,楕円曲面の切断及び2重切断から自然に得られる(平面)曲線の性質がかなりわかって来た.とりわけ,楕円曲面が具体的なWeierstrass 方程式で与えられている際は,得られる平面曲線の方程式やその次数など具体的な形を求めることが可能になった.この手法を,研究代表者の以前の成果に適用し,従来の成果の精密化を検討する.具体的に想定しているのは,2004年度に研究代表者とE. Artal Bartoloが行った有理曲線配置に関する結果のうち, conicと4次のnodal rational curveの組み合わせに関する成果の精密化である.2004年の段階では,conicを固定して4次曲線を構成していたが,今年度はまず4次曲線を固定し,条件をみたすconicを数え上げること考える.続いてこれら複数のconicの違いから生じる曲線配置のトポロジーに違いが対応する楕円曲面の切断の性質を用いて説明できないかということを検討したい. 3. 1, 2の計画が進展したのちは,より高次の多重切断について考察を深めたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
1. 国内で予定していた情報収集の出張が,先方との都合が会わず取りやめになったため.
2. 外国の共同研究者と予定していた研究打ち合わせが,当方の日程がつかず取りやめになったため.
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次年度使用額の使用計画 |
本年度は,上記の出張を行う予定である.
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