研究課題/領域番号 |
25610010
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大鹿 健一 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70183225)
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研究分担者 |
角 大輝 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (40313324)
金 英子 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (80378554)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 指標多様体 / 不連続領域 / 力学系 |
研究実績の概要 |
指標多様体の中で,一番重要とされる,自由群の指標多様体について,外部自己同型群のダイナミクスと,Schottky群の境界にある群の性質についての研究を進めた.外部自己同型群の作用についての不連続領域である,primitive stableな群の特徴づけについての,Woojin Jeon, Inkang Kim, Cyril Lecuireとの共同研究は昨年度に始められたが,今年度最終的な結果を得て,出版することができた.またSchottky空間の境界にある群は全て3次元閉多様体の極限となることを示した.Woojin Jeon氏と共同で,極限集合のP-S測度の特異性に関する研究を行い,Cannon-Thurston写像が存在する状況下での解析を完全に行うことに成功した. 複素多様体上の正則写像の半群の力学系およびランダム複素力学系を研究し,特に一次元ランダム複素力学系において、極限状態関数のマルチフラクタル解析などを行った. 曲面の写像類群の興味深い部分群 (例えば超楕円的ハンドル体群)の研究を行ない,特に擬アノソフ写像類について注目し, 最小エントロピーの漸近挙動の研究を行った.また曲面の基本群が両側順序を持つ場合, その順序を保つ写像類について研究を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
指標多様体の外部自己同型の作用については,自由群の場合に限れば,当初目標としていた結果を得ることができたので,この部分は十分に成果が上がったと言える.また複素球面上の正則写像の半群の力学系の研究も順調に進んでいる.モデル多様体を利用して,力学系を分析する部分は未完成であり,現在進行中であるが,今後研究の研究の土台となる部分までは,研究が進んでおり,今年度以降の研究により,完成させることができると期待される.
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今後の研究の推進方策 |
自由群の指標多様体に関して得た結果を一般の指標多様体へと拡張するのが,まず当面の課題となる.このためには,一般のKlein群の変形空間とその幾何極限に関する深い理解が必要であるので,まずこの部分の研究から始めたい.この中で特に力を入れるべきなのは,Gromov-Hausdorff極限が,指標多様体での極限と異なる場合の解析である.この場合多様体の退化がどのように起こるかという解析をmarkingがどこに位置するかという情報とともに見る必要がある.退化の分析は基本群が同型な場合のように,abelianなlocusで起こるとは限らないので,これを分類する作業は慎重に行う必要がある.一方でこの退化の現象の分析手法はHeegaard分解でHempel距離が無限に発散した場合の極限の研究と類似性があるので,この結果を参考にしつつ進めたい. 次に自由群の場合を含めて,閉多様体に対応する点の配置の研究に進む.これらの点の集合にも外部自己同型群が作用するが,その作用は離散作用であり,全体の力学系を近似するためのデータを与えると期待される.
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次年度使用額が生じた理由 |
指標多様体の離散分布の力学系についての,Strasbourg大学での共同研究が2014年度末には終わらず,継続をする必要が生じたため.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用となった部分については,4月に継続した,Strasbourg大学での共同研究とその成果を論文にまとめるための経費に充てる.
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