本研究の元々の主目的は、以下の二点であった。(1)ユークリッド空間のコンパクト領域Ωに対し、ある固定点xからの距離のs乗をその領域上積分したものを考える。sの値によっては積分が発散するが、その場合は積分を正則化して有限な値を取り出す。これで得られたものを、領域Ωの点xにおけるRieszポテンシャルと呼ぶ。このポテンシャルの性質の研究。(2)平面領域の部屋に、360度見渡せる監視カメラを何台か設置し、死角がないようにするには何台のカメラが必要か、という問題が美術館問題である。上のRieszポテンシャルの観点から、どの位置にカメラを設置するのが一番良いか、という最適美術館問題。 (2)の方は、問題がNP困難であることが分かったことと、その時点で一応のプログラムが完成したことにより、研究は昨年度中に完了した。(1)に関して今年度行った研究は以下の通り。(i) Rieszポテンシャルを定義する際に必要な発散積分の正則化を、超関数論で用いられる二つの方法、Hadamard正則化と解析接続を用いる方法で、より広い適用範囲(ユークリッド空間の部分多様体)に対してきちんと定式化した。(ii) Rieszポテンシャルを領域上積分して得られる量をRieszエネルギーとよぶ。4次元ユークリッド空間内の単位球面の中の結び目に対し、冪sが―2のときのエネルギーを考え、与えられた結び目をこのエネルギーを減らすように変形するプログラムの作成を外部委託していて、最初のモデルは昨年度中に受け取っていたが、これを改良した。
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