複素力学系はジュリア集合と呼ばれる不変集合を生成する。この集合は典型的なフラクタルであり、その形状は写像のパラメータに鋭敏に依存して変化する。特に複素ヘノン写像と呼ばれる複素2次元の力学系を考えると、そのジュリア集合は実4次元空間におけるフラクタルになるわけである。
我々はこの3年間で、このような実4次元空間におけるジュリア集合等のフラクタルをヴァーチャルリアリティを用いて可視化する方法の可能性について研究を行ってきた。今年度は、分担者の荒井(北大)ら関係者4名が東京で集中的に議論を行ない、前年度までの知見に基づいてより具体的な問題点を定式化した。その中でまず、可視化する対象物を4次元空間において回転・移動させるためのコントローラの具体的な設計方法について指針が示され、これから実装することが確認された。また、京都大学の宇敷重広氏が描いてきた複素ヘノン写像のジュリア集合を可視化したデータをどのようにアーカイブ化するかについて意見を集約した。さらにフラクタルを点集合で計算した際にそれを補間する方法については、homotopy shadowing の方法がどのように有効であるかを1変数多項式力学系やその十分小さな摂動として得られるソレノイド状のジュリア集合の場合に考察した。このアルゴリズムは2次元に射影した場合の画像はすでに得られていたが、3次元ヴァーチャルリアリティ用の画像の計算は残念ながら達成できなかった。
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