身の回りの系では,非平衡状態(例:コップに熱いコーヒーが入っている)が最終的に平衡状態(コーヒーが冷めて室温と同じ温度になる)に落ち着くことはよく経験する.ところが,このような緩和現象を量子力学から説明できる満足な理論はない. 本研究ではこの問題に取り組み,特に,どのような条件の下で緩和が起きるかの条件と,その際の緩和時間を解明することを目的とした. 結果として,自然と思われる仮定(非平衡部分空間が典型的である)の下では緩和が必ず起きるが,緩和時間が「ボルツマン時間」というべき異常に短い時間スケールになることがわかった.これは「自然と思われる仮定」が全く自然ではなかったことを示す.
|