研究実績の概要 |
昨年度に引き続き, 主な研究目的は等距離摂動領域に着目し, 線形及び非線形楕円型境界値問題に付随する新しい等周不等式を探索・発見しその等号を実現する解の幾何学的特性を明らかにすることであった。楕円型境界値問題及びそれに関連する放物型方程式(熱方程式, 拡散方程式)の解の幾何学的特性について, 主な研究成果は次の2つである。 1. ユークリッド空間にプロパーに埋め込まれた超曲面とこの超曲面から等距離にある2つの超曲面の間にある等距離摂動領域上の熱方程式を様々な初期条件及び境界条件の下で考えて, 元の超曲面が不変等温面ならば, 幾何学的特性として, 超曲面は球面か超平面に限ることを示した。成果を論文 S. Sakaguchi, Springer Proceedings in Mathematics & Statistics, 掲載受理印刷中, で発表した。 2. 非線形楕円型方程式の解の幾何学的特性を明らかにするために必要な半連続粘性解の強比較定理を研究協力者の大沼正樹(徳島大学)との共同研究で得た。論文を準備中であり, 成果を2016年9月関西大学で開催予定の日本数学会秋季総合分科会において発表予定である。
また, 2015年4月11日から4月18日の1週間に等周不等式の研究の専門家である研究協力者(Vincenzo Ferone 教授・ナポリ大学)を東北大学へ招聘し, 楕円型境界値問題に関係する等周不等式について連続講義(90分を5回)をしてもらい討論・情報交換を行った。2016年2月と3月の2ヶ月間ルーマニア・IMAR 研究員 の Cristian Enache 博士を東北大学へ招聘し, 研究課題で扱う完全非線形楕円型作用素を主要部とする非線形楕円型方程式の解の正則性等の定性的性質について集中的に討論・情報交換を行い, 共同研究を継続中である。
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