研究課題/領域番号 |
25610025
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
儀我 美一 東京大学, 大学院数理科学研究科, 教授 (70144110)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 表面拡散流方程式 / 平均曲率流方程式 / 距離 / 自己相似解 / 一意存在 / 安定性 |
研究実績の概要 |
平均曲率流方程式は、概念的には曲面積の勾配流ではあるが、これは曲面全体の空間お接空間の2乗可積分空間の内積についての勾配である。これに対して、表面拡散流方程式は曲面積の勾配流であるが、ソボレフノルムH1の双対であるH{-1}についての勾配流とみなせる。両方とも同じ量についての勾配流であるが、勾配をとる距離が異なっているところが重要であり、その解析的構造は大きく異なっている。例えば平均曲率流方程式による運動については、包含関係は時間発展により保たれるが、表面拡散流方程式では保たれない。 本研究では、この表面拡散流方程式に対して熱溝の生成問題について、自己相似解またその安定性について考察した。具体的には空間1次元の問題を半空間で考え、端で溝の角度を与える。解は一変数関数のグラフとして与える。方程式が4階であるためその「3階微分が境界上ゼロ」という境界条件を課す。これは物理的な境界条件である「流量ゼロ」を線形化した条件である。この問題を、有界な初期値を与えて解く問題を考えた。特に初期値がゼロの場合は自己相似解となることが期待される。この初期値問題をヘルダー空間で解くことにより、有界自己相似解の不在、一意性とその安定性を、溝が浅い場合について初めて厳密に証明した。技術的には整合しない初期値についての存在定理で、従来の初期値の正則性が多く必要であった点を大幅に改善した。 その他、平均曲率流方程式を距離空間上の勾配流とみなす方式についての考察を深めた。また距離空間上のハミルトン・ヤコビ方程式の粘性解についても、研究協力者の発展型の問題に拡張するなど、一定の進展があった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
個々の方程式についての研究については、順調に発展している。しかし、平均曲率流方程式を距離空間上の勾配流とみなせる数学的枠組の提供という面では不十分である。また、距離空間上のハミルトン・ヤコビ方程式については、研究協力者は一定の成果を上げたが、もともと提案した手法が適用できる方程式が限定的であったため、広範囲な応用は期待できないことがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、平均曲率流方程式や表面拡散流方程式を距離空間上の勾配流とみなすべき適切な距離概念を提案する。一方、1調和写像流方程式のような方程式についても、距離空間の勾配流とみなせるかどうかを考察していく。平均曲率流方程式や表面拡散流方程式に限らず、関連する問題を考えていきたい。 ハミルトン・ヤコビ方程式についてであるが、より具体的な問題を考え、それについて解の挙動等の深い考察をしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月10日頃から1週間の招聘予定の外国人が訪問を突然キャンセルしたことにより、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
この招聘旅費は、開催する研究会等の招聘旅費や、代表者の出張旅費として使用する予定である。
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