距離空間におけるハミルトン・ヤコビ方程式は、関数の勾配という向きの概念はないが、関数の勾配の大きさという概念は作れる。本研究計画では、一般のアイコナール方程式について適切な解の概念を提示して、その粘性解理論を確立した。この概念に触発されて、さまざまな解の概念が確立されるようになり、距離空間上のハミルトン・ヤコビ方程式という分野が創設されつつある。研究協力者は、この研究を発展型の問題に拡張した。 一方、曲面の発展方程式についてであるが、表面エネルギーがクリスタラインの場合は、この表面エネルギーに付随する距離はユークリッド距離ではなく、フィンスラー(ミンコフスキー)距離となる。この計量のもとでの異方的平均曲率流は、曲線の場合以外は長らく扱えなかったが、より一般的な状況も含めて、曲面の動く場合に拡張することに成功した。異なる距離による勾配流の研究を進めるうえで重要な研究であると確信している。
|