研究概要 |
本年度は定常確率場において不規則間隔で観測されるデータが得られた場合について、パラメトリックモデルに対する新たな検定方法を提案し, その理論的性質の一部について明らかにした. サンプリング方法についてはデータ数が増大するとき, 観測値間の距離が密になると同時に観測領域が増大していく混合漸近理論(mixed asymptotics)の枠組みの中で考察した. 本検定方法の長所は主に2点あり, 第1に帰無仮説の下での検定統計量の極限分布は期待値・分散が簡潔な表現を持つこと, 第2に検定統計量は過去の関連論文で提案したデータをフーリエ変換した量に基づき計算できるので, 大規模データの場合においても多大な時間を要しないことにある. また本検定統計量はデータから計算したスペクトル密度関数の推定量と帰無仮説の下でのパラメトリックなスペクトル密度関数の差の2乗を各周波数で計算し, それを多次元の周波数領域において多重積分することにより得られるが, 差の2乗だけでなくKullback-Libler Information, J-divargence, Chernoff-distanceなど2つのスペクトル密度関数の距離を各周波数で計算し, それを多重積分した検定統計量についても同様の理論的性質が導ける. これらの結果に基づいて, 固有定常確率場などの非定常確率場に対するパラメトリックモデルに本検定法を適用した場合の理論的性質がどのようになるか現在考察中である.
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