研究課題/領域番号 |
25610033
|
研究種目 |
挑戦的萌芽研究
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
小林 亮 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60153657)
|
研究分担者 |
石黒 章夫 東北大学, 電気通信研究所, 教授 (90232280)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 歩容遷移 / スナガニ / 数理モデル / 進化的視座 |
研究概要 |
和歌山県白浜町および沖縄県西表島において、スナガニ(および近縁種のツノメガニ)を捕獲し、歩行と走行の計測を実施した。自然な状態での歩行・走行を実現するために、現地の砂を用いて走行レーンを作り、高速度撮影を行った。その画像解析によって、歩容ダイアグラムを作成した。その結果、低速歩行時には8脚全部を用いているが、速度が増していくにつれ、使用脚数が8脚から7脚、さらに6脚、5脚へと減少方向に遷移することが確認された。4対の歩脚に頭側から 1, 2, 3, 4 と番号をつけ F, H で進行方向前方と後方を示すとする。8脚から7脚の遷移では F4 脚が、7脚から6脚の遷移では R4 脚が使われなくなる。6脚から5脚の遷移においては F1 脚 が使われなくなる場合と F3 脚が使われなくなる場合の2通りが観察された。第2脚 (F2, R2) は最も強い脚でどのような状況でも使用されている。現段階までの計測では、4脚までの遷移は観察されていない。いずれにせよ、歩行(走行)速度の増大に対応した使用脚数の減少は、実験的に確認された。 また、高速走行時においては、完全に接地脚のない時間帯が存在しており、厳密な意味での「走行」であることも確認された。このとき、スナガニは明らかに慣性領域の運動に踏み込んでいる。さらに、完全に明確とは言えないが、高速走行時においては、前方脚の「引き」よりは、後方脚の「蹴り」がより強く駆動力を生み出しているようである。 カニの歩行の数理モデルの構築を試みているが、スナガニの胴体および脚構造を完全に取り入れた形でのモデリングはかなり困難であるため、なんらかの単純化が必要であり、現在その方法を検討中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では、ゴキブリの計測も予定していたが、技術的な理由(脚の接地・不接地の確認が困難)で断念した。スナガニの方の計測に関してはおおむね順調に進んでいる。問題は数理モデルで、完全にカニの身体全体を記述するようなモデリングは難しく、本質を失わないでどの程度簡単化できるかを模索中である。この作業は1年目で終わらせる予定であったので、遅れの原因となっている。
|
今後の研究の推進方策 |
適切な程度の単純化による数理モデルを構築する。脚の形状をどこまで単純化するかが鍵となっている。 カニの進化的な位置は、エビからの進化形であり、この過程において縦方向から横方向への進行方向の変化が起こっている。これには、力学的な理由が存在しているはずで、その点についても考察を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
高速度撮影用のカメラの購入を予定していたが、研究分担者の石黒氏の研究室で高性能のものを購入したため、必要がなくなった。 パリ第7大学の関本氏とのディスカッションのための旅費にまわす。
|