研究課題/領域番号 |
25610036
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
二宮 広和 明治大学, 公私立大学の部局等, 教授 (90251610)
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研究分担者 |
稲垣 正司 独立行政法人国立循環器病研究センター, その他部局等, その他 (80359273)
上山 大信 明治大学, 公私立大学の部局等, 教授 (20304389)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 数理医学 / 不整脈機序 / パターン形成 / 反応拡散系 |
研究実績の概要 |
心臓は,さまざまな組織からできているが,興奮性細胞の集まりであり,心臓の活動を興奮性媒体上の伝播現象によってとらえることができる.心室細動などの不整脈は,電位の伝播がスパイラル波となることによって起きると考えられている.本研究課題では,スパイラル波の自発的発生メカニズムの解明を行うため,4つのテーマ(1)「tipの自発的形成メカニズム」,(2)「障害物の形状とスパイラル波の発生の関係」,(3)「ミクロな障害物のマクロな影響」,(4)「実験によるミクロな状態変化のマクロな影響」に分けて研究を行っっている. 平成25年度の結果を受けて平成26年度はテーマ(2),(3),(4)の研究を行った.特に,テーマ(2),(3)については,障害物の形状や配置に関する条件について調べて,一部はすでに論文として発表し,その発展的研究を現在,論文にまとめているところである.また,自発的スパイラル形成の鍵となる2次元進行スポット解の構成を行い,論文にまとめた.また,多次元進行スポット解の構成に成功し,現在,論文を執筆中である. テーマ(4)については,培養心筋細胞シート上に障害物を作成し,スパイラル波の形成条件を調査することを予定した.プラスチック障害物を置いて心筋細胞を培養した際に,障害物周辺で心筋細胞が多層化し,理想的な均質媒質を作成することが困難であった.次年度は,培養条件を変更して、障害物を有する均質な媒質の作成を試みる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
不応答領域などの障害物による自発的スパイラル波の生成メカニズムを反応拡散系を用いて研究し,2次元空間上の障害物の形状や配置と自発的なスパイラル波生成の関係を数学的に明らかにすることは順調に進んだ.しかし,心室細動の問題を取り扱うには,3次元空間上の障害物を考える必要があり,2次元空間で得られた知見を3次元空間に拡張するための情報収集やそれに基づく手法の開発に至っていない.そのため,期間を延長して3次元空間におけるスパイラル波生成のメカニズム解明を行う.現在のところ,自発的スパイラル形成において重要な役割を果たす進行スポット解の構成を2次元だけでなく多次元空間に拡張することに成功している. ミクロモデルとマクロモデルの関係についての研究はまだ十分進んでいると言えない. 以上より,「やや遅れている」と判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
現在,3次元空間モデルを簡略化する手法を開発している.この手法をまず,解の挙動が分かりやすいモデルである平均曲率流に適用して,そのモデルの汎用性を確認する.このモデルで3次元モデルを十分に表現できていることが分かれば,興奮性媒体にモデルに適用し,3次元空間における障害物の形状や配置と自発的スパイラル形成の関係を調べていく.実験や臨床的知見からのフェードバックを受けながら,3次元空間における自発的スパイラル形成の条件を調べる.
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次年度使用額が生じた理由 |
2次元興奮性媒体上の伝播現象における障害物の影響や自発的スパイラル波形成のメカニズムについての研究は進んだが,状況は空間次元によって変わることが分かってきた.心室細動では,2次元興奮性媒体というより3次元興奮性媒体と考える方が実験結果と合うことが分かってきた.そのため,3次元空間における自発的スパイラル形成のメカニズムの解明が必要である.もちろん,2次元のメカニズムをそのまま3次元空間に拡張した条件もあるが,3次元空間特有の条件導出を行うため,次年度に延長して研究を遂行することとした.
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次年度使用額の使用計画 |
3次元興奮性媒体上の障害物の形状や配置を考慮した数値計算を行い,理論構築を助ける.理論構築においては,現在,3次元空間モデルを簡略化する手法を開発している.この手法をまず,平均曲率流に適用して,そのモデルの汎用性を確認する.このモデルで3次元モデルを十分に表現できていることが分かれば,興奮性媒体にモデルに適用し,3次元空間における障害物の形状や配置と自発的スパイラル形成の関係を調べていく.実験からのフェードバックを受けながら,3次元空間における自発的スパイラル形成の条件を調べる.研究分担者との研究打合せのための旅費,成果発表旅費,論文投稿料,検証実験のための消耗品費に未使用額をあてる予定である.
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