研究課題
恒星近傍にある暗い系外惑星を観測する方法として、恒星からの光のみを極端に減光するハイコントラスト撮像法がある。このために、望遠鏡焦点面に位相マスクを置き、瞳像内で恒星光を打消し合う干渉状態とし、リオストップで恒星光を遮断するのが、位相マスク型ステラコロナグラフである。望遠鏡焦点面に掩蔽板を置くよりも、優れた消光性能と恒星のより近くにある系外惑星を検出できる能力を有している。位相マスクとしては、4分割型(各象限の位相を0、π、0、πとする)、8分割型、ボルテックス型(φ=2nθ)などが提案されており、これらは円形開口の場合に恒星光を完全に遮光できることが解析的に明らかにされている。しかし、これらの位相マスクは、副鏡やスパイダーを有する通常の望遠鏡の場合には開口が完全な円形とならないために、その消光性能が著しく損なわれてしまう。副鏡やスパイダーの影響を除く方法としては、副鏡の影を除去するような補正光学系の導入、コロナグラフの多段化、入射瞳面にアポダイザーの挿入などがあるが、焦点面に位相マスクを単に置くことよりも煩雑となる。本年度の研究では、副鏡およびスパイダーがあっても恒星光をリオストップでほぼ完璧に遮光できる位相マスクを見い出した。位相マスクの位相分布は、光軸光を瞳の透過部分で零となるように逐次型位相回復アルゴリズムを用いて数値的に求めた。このようにして求められた位相マスクによれば、10桁以上のコントラスト比が得られることを示した。
2: おおむね順調に進展している
昨年度は管理職としての職務が膨大であったため、やや遅れ気味であったが、今年度は特任教授となり、研究に割ける時間が多くなったためである。
今年度の研究により、副鏡やスパイダーの影を有する瞳に適する焦点面位相マスクフィルターを設計できることが判ったが、この位相マスクフィルターは一義的ではない。パラメーターを変えることで多様な解がある。アダプティブな位相マスクとしての特性を出せるように研究を進める。最終年度となるので、研究の取り纏めに向けてインテンシブな研究討議を行う。
年度末決済に間に合わなかったため。
次年度における物品費、旅費、および謝金に繰り入れて有効に使用する。
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Proc. SPIE
巻: 9143 ページ: 914334-1~8
10.1117/12.2054790