研究実績の概要 |
本研究の目的は, 重力波実験で得られた”力”の超精密測定を素粒子実験, 特にニュートリノ質量測定へ応用する方法を開発することにある. 我々はニュートリノが巨視的物体に与える運動量輸送に着目する. この運動量輸送はニュートリノと原子核の中性カレントコヒーレント弾性散乱で表れる. この運動量輸送を”力”として検出することで, ニュートリノ質量を決定するのが本研究のアイディアである. J-PARCの大強度ニュートリノビームをねじれ振り子で測定する状況で, ねじれ振り子に与える力を精密に計算した. 結果, この方法には2つの問題が出現することがわかった. 問題は, 絶対的な統計量の不足である. 現在のJ-PARCの出すニュートリノ量では, 100年以上の連続運転をする事で信号が見えて来る. もう1つは, J-PARCが出すような高エネルギーなニュートリノは厳密にはクロスセクションは質量でなく, 質量と運動エネルギーを合わせた全エネルギーで決まる. ニュートリノビームのエネルギーの不定性により, 質量決定能力はほぼ失われる. しかしながら, ねじれ振り子などの”力“の検出器が素粒子実験において新しい可能性を持つことは変わらない. 以前から, 宇宙背景ニュートリノを探索できる可能性は指摘されており, さらに我々は(弱い相互作用をしない)暗黒物質の探索可能性に着目している. 以上から, ねじれ振り子の高感度化は今度とも重要である. そのために, 我々は極低温ねじれ振り子の基礎デザインを確立した. 今後は, デザインしたねじれ振り子をもとに暗黒物質の探索可能性を定量的に評価する予定である.
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