研究実績の概要 |
今年度は、まず東北大学サイクロトロンラジオアイソトープセンター(CYRIC)において昨年度に実施した、7Li(p,n)反応で生成した準単色中性子を用いた実験のデータ解析を行った。 中性子の入射エネルギー 28 MeV においては、発光量から見て、35Cl(n,p)反応から来ているであろう幅の広いピークがスペクトルに見られたが、より低い入射エネルギーにおけるデータでは、予想される発光量の位置にピークの確認はできなかった。これは、低いエネルギーの単色中性子を np 弾性散乱にて得ていたため、バックグランドと統計的に区別できなかったものと結論づけられた。
np 弾性散乱を用いた低エネルギー単色中性子を得ることは、CYRIC では難しいと考え、本年度は東北大学工学研究科の高速中性子実験施設を用いた実験を行う方向で検討していたところ、先行研究(Fast neutron response of 6Li-Depleted CLYC detectors up to 20 MeV, N. D'Olympia et al., Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 763 (2014) 433-441)が7月4日に公表され、本研究の当初目的であった、35Cl(n,p)反応による中性子エネルギーの測定について詳細な検討が既になされていたことが明らかとなった。その研究によれば、中性子エネルギー 4 MeV までは実用化が可能であることが示され、また 8 MeV までであれば、検出効率は落ちるものの、ピークとしてスペクトルに現れるが、それ以上のエネルギーでは、他の反応チャンネルが開くことから、幅広いピークとしてしか現れず、エネルギー測定に使えないということが示されていた。 このような状況のもと、今年度は研究計画を改めて立て直すため、CLYC に関する論文等を詳細に検討することを中心に行い、今後何をすべきかについてをまとめた。
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