最初の2年間では、新型無機シンチレータCLYC について、速中性子の運動エネルギーを、発光量から求めるという、新たな発想がどれだけの可能性をもっているかについての研究を、東北大学サイクロトロンラジオアイソトープセンターの中性子ビームラインを用いて行った。 中性子のエネルギーに対応すると思われるピークが発光量スペクトルに見られたが、バックグランド中性子が多かったこと、また、予定していた中性子二回散乱法による実験は、バックグランドの方がはるかに多く、スペクトルに見られたピークが中性子によるものかどうかの最終判断まではできなかった。この実験が終わってすぐ、本研究で明らかにしようと予定していた研究内容については、先行研究が論文発表し、明らかとされた。 そのため、研究計画を練り直し、本年度においては、先行研究中で課題とされていた、発光強度の時間変化がシンチレータの温度によってどのように変化するか、その変化から速中性子のエネルギー測定を発光量で行う手法に対して、エネルギー分解能の向上を見る事ができるかについての研究を行った。 その結果として、シンチレータの発光特性の温度変化については、室温と-20度との比較において、顕著な違いが見られず、本研究の目的とする、速中性子のエネルギー測定を発光量で行う、という点についての改善をすることができなかった。 また、発光特性の温度依存性についても、先行研究が先に原著論文として発表を行ったが、彼らが得た結果も、本研究で得た結果と同様であった。
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