これまでに開発した6次元ブラソフソルバーを基に、空間7次精度差分法MP7スキームを実装し、時間積分法としてセミ-ラグランジュ法を適用した並列計算コードを開発した。はじめに固定直交座標でのテスト計算を行った。高次の導関数を持つ関数や不連続点を持つ関数の移流計算では、これまでに本研究で開発した3次、5次の計算法よりも精度が向上していることをたしかめた。新たな時間積分法により、1ランあたりの計算コストを増大させることなく高い空間解像度を達成できている。高速フーリエ変換を用いたポアソンソルバーも新しく開発したため、ダークマターとニュートリノ(熱速度成分)の混合密度場に対して対応する重力ポテンシャルを設定した空間精度と整合的に解くことができる。これらの成果を論文としてまとめて、Astrophysical Journal 誌に投稿した(arXiv:1702.08521)。また、国内外での研究会や研究機関でのセミナーで成果を発表した。さらに、プラズマ物理の諸問題への適用を検討し、テスト計算を開始した。 次に、共動座標系を設定し、膨張宇宙の中で残存ニュートリノの空間分布の進化を追うことができるハイブリッドコードを開発した。ハイブリッドとは、ダークマター成分は従来のN体計算の手法を用い、熱速度の大きいニュートリノに対しては6次元ブラゾフ方程式を解くという意味である。残存ニュートリノの総質量を0.1エレクトロンボルトから0.4エレクトロンボルトまで変化させ、複数のシミュレーションを実行し、線形理論および高次の摂動論と結果を比較した。シミュレーションのナイキスト周波数まで、また摂動論の適用可能範囲までよい一致が得られることを確認した。大規模な宇宙論的構造形成シミュレーションを行う準備が整った。
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