研究課題/領域番号 |
25610055
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
白水 徹也 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (10282716)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 高次元ブラックホール / string理論 / 数学 / 時空の安定性 |
研究概要 |
高次元ブラックホールの安定性解析の準備のため、国内に滞在していた外国人研究者と議論を行った。 一方、高エネルギーにおいてstring理論はEinsteinの一般相対論に補正項が現れることを予言している。このような理論において、ブラックホール時空の解の唯一性が成り立つかどうかは、ブラックホール時空の安定性を議論する以前に確認することが肝要である。そこで本年はdynamical Chern-Simons gravityr理論とGauss-Bonnet項を補正としてもつ重力理論を典型的な例として考察を行った。前者に対してはSchwarzschild時空が回転しないブラックホールの唯一解であることを示すことに成功した。一方、後者の理論に対しては第一段階として補正項が小さいとして摂動的に扱い、エネルギーがゼロの状態が平坦時空になることを示した。また、理論が健全であることを最初から保証するために、正質量定理と無矛盾な理論の構成を行った。具体的にEinstein理論と一般のスカラー場を考えた。その結果、スカラー場が正準なものであり、そしてそのポテンシャルが超重力理論で扱われる形であることを示した。これは宇宙の加速膨張を説明するために現在様々な理論が提案されているが、それらに強い制限を与えるものである。 更なる数学者との強い連携を図るため、私自身の所属先を物理学教室から数学教室に移ることを模索し、実現した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
高次元ブラックホール時空の安定性の解析には数学者の協力が欠かせない。そのためには物理教室にとどまっていたのでは、このミッションを成し遂げることはできない。そこで、私自身が数学教室へ移動することを決意し、実行した。想定したよりも課題は困難を伴うものであったため、より適切な環境を準備するのに時間を要した。その結果遅れることとなったが、周辺の課題は着実に進んでいる。特に、健全な理論の選定において、正質量性が成り立つことを要請するという新しい原理を提案したことは今後の研究に重要である。実際に、理論が標準的なものに限られる傾向があることを示した。標準的な理論を念頭に研究を進めることの正当化が得られたことになる。
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今後の研究の推進方策 |
新しい所属先において、今回の課題に最適な数学者を選定し、議論を行う予定である。具体的には安定性解析の数学的手法を習得する。これには2年ほど時間を要することが想定される。従って、より短期的に解決が見込まれる周辺の課題、特に安定性が保証された重力理論の構築も平行して行うことにする。昨年度はWittenによる議論を採用し、今年度も同様の手法を採用するが、その際にスピノールを導入したことが結果の普遍性について疑念が残る。そこでSchoen&Yauによるまったく別の議論の可能性も同時に模索する。Wittenによる議論と比較するとSchoen&Yauの議論を自由自在に扱えるには高度な数学の知識が再び要求される。 ここでも数学者との密接な連携は欠かせないであろう。いずれにせよ、後者でも同じ結論が導かれるかどうか検討する必要ある。
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次年度の研究費の使用計画 |
所属の移動のため、年度末に予定していた小研究会の開催ができなかったため。 フランスで開催される国際会議参加に必要な旅費等の一部として使用する。
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