研究課題
高エネルギー光子・光子衝突における縦偏極と横偏極の中性ベクトル中間子のエクスクルーシヴな生成で散乱角が小さいときは、tチャネルでグルーオン2個を交換して各光子が前方への中性ベクトル中間子に遷移するプロセスが支配的となるので、各光子のベクトル中間子への遷移振幅(インパクト・ファクター)を用いて表せる。これを、光子から発生した仮想クォーク・反クォーク(q-反q)ペアとグルーオンが相互作用する摂動QCD振幅と、q-反qペアのベクトル中間子への非摂動的な発展との畳み込みとして求める標準的手法(QCD因子化)は、縦および横偏極ベクトル中間子への遷移をそれぞれツイスト2および3の量として与え、前者には適用可能だが後者では畳み込み積分が赤外発散して破綻する。この困難を回避するため、光子に一旦バーチャリティを持ち込んだ仮想的振幅を計算し、分散公式とクォーク-ハドロン・デュアリティに基づいて仮想的振幅からの外挿を行って実光子の物理的振幅を決定する光円錐和則を用いた。こうして求めた横偏極でのインパクト・ファクターの結果を用いて、縦偏極と横偏極の中性ベクトル中間子のエクスクルーシヴな生成の断面積の定量評価を行った。KEKBに相当する衝突エネルギーで散乱角への依存性も計算し、結果は、2つの縦偏極ベクトル中間子が生成される断面積に比べ抑制されず、従来の予想とは異なる結果となった。また、高エネルギー陽子・π中間子衝突でのエクスクルーシヴDrell-Yan過程をQCD因子化で扱い、核子の一般化パートン分布関数(GPD)の最近のフィットを用いて断面積を評価し、将来のJ-PARC実験での測定シグナルをシミュレーションしてGPD決定への実効性を示した。QCD因子化で考慮されないソフトなQCD効果も光円錐和則を用いて計算し、この結果もGPDで表せること、J-PARCでの断面積を約5倍に増大させることを示した。
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SPIN2016 proceedings (IDEALS, the digital repository of the University of Illinois)
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Physical Review D
巻: 93 ページ: 114034 (1~17)
10.1103/PhysRevD.93.114034