研究実績の概要 |
本研究は、超伝導TESボロメータのバイアスに交流電気変調をかけ、信号帯域を高周波側に持って行く事で宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の1/fノイズの影響を除去しようとするアイデアの実証実験である。H25年度までは実験装置の開発、具体的にはAl-Tiバイレイヤー超伝導TESボロメータを0.3Kまで冷却することおよびSQUIDによる読み出しに注力し、H26年度はいよいよAC変調TESでのミリ波読み出し実験を行った。実験では、まず、TESボロメータが常伝導から超伝導へ転移する過程の電流電圧特性(IVカーブ)を測定した。これによりボロメータが安定に動作しうる印加DCバイアス(1.077V)および変調ACバイアスの振幅と周波数(±130mV, 35Hz)を調べた。つまり、動作点と変調の大きさを決定した。このTESボロメータ駆動条件のもとで、ボロメータに150GHzのミリ波を照射した。ミリ波の信号が区別できるよう、ミリ波にはチョッパーで12Hzの変調をかけ、ボロメータのACバイアスとのビートを取った。このようにして取得した信号をスペクトラムアナライザーで周波数解析した。この結果、チョッパーの変調周波数およびボロメータのACバイアス周波数の他に、これらのサイドバンド信号を観測し、本研究で提案するボロメータへのAC変調によるミリ波信号の高周波移行が実現出来ていることを実証した。また、ACバイアスの周波数を変化させてボロメータの応答を確認したところ、1300HzまでACバイアス駆動できることがわかり、また、これはボロメータの時定数と一致していることが確認できた。以上より、本研究で提案した超伝導TESボロメータにACバイアスをかけることで、ミリ波信号を高周波側へ移行し、1/fノイズの影響を受けにくく出来る事を原理実証することができた。よって本研究の目的は達成された。
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