研究課題
溶液中での均質核生成実験では、多くの系で準安定相や非晶質が前駆体として析出する核生成過程が信じられている。最近、新しい現象も見出されており、核生成と前駆体のかかわりは、今世界的にホットな領域になっている。しかし、核生成は極微小な領域で、かつ、短い時間スケールで起る現象であるため、その証拠をつかむのは難しく、従来の光学顕微鏡や光散乱を用いた“その場”観察実験では断片的な情報しか得るられなかった。実際の過程を解明するためには、個々の核の観察が最も直接的で有効な手法と言える。その為には透過電子顕微鏡が最も強力な手法だが、電子で物質を観察する電子顕微鏡は高真空が必要で、溶液を入れることができない。これに対し、本研究課題では、水に代えてイオン液体を溶媒に用いた透過電子顕微鏡による溶液成長の“その場”観察実験により、核生成過程を相同定を含めてナノスケールで直接観察し、核生成過程解明の突破口を拓くことを目的とした。我々は、水に変えてイオン液体を溶媒として透過電子顕微鏡内に溶液を導入したところ、1 nm以下の空間分解能で個々の核の直接観察に成功した。塩素酸ナトリウムをイオン液体に溶解し、温度を制御することで核生成過程を観察した結果、安定相に加えて、準安定結晶も同時に生成することが分かった。また、準安定相が安定相に接触すると、瞬く間に取り込まれる現象や、成長速度はほとんど同じであるのに、溶解速度は準安定相の方が大きいことも分かり、これらの結果として最終生成物の結晶相が決まるという、全く新しい核生成径路を発見した。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 2件)
Journal of the Ceramic Society of Japan
巻: 122 ページ: 679-687
10.2109/jcersj2.122.679
Crystal Growth & Design
巻: 14 ページ: 3596-3602
10.1021/cg500527t
Crystal Research and Technology
巻: 49 ページ: 315-322
10.1002/crat.201400010
Journal of Crystal Growth
巻: 394 ページ: 106-111
10.1016/j.jcrysgro.2014.02.034
Journal of the American Chemical Society
巻: 136 ページ: 1762-1765
10.1021/ja412111f