透過型電子顕微鏡を用いて、10-7[rad]以下の角度分解能を持つ小角電子線散乱法を実現するとともに、原子スケールでの実空間観察が可能な高角度環状暗視野法(走査型透過電子顕微鏡法)を用いることで、原子スケールからマクロスケールにわたる広範囲な空間領域で、機能性酸化物の微細構造観察・評価を行う。特に、多重相境界領域(MPB領域)を持つ鉛系リラクサー誘電体における巨大圧電効果の起因とされる階層的ドメイン構造や分極回転機構について明らかにするとともに、新たな巨大圧電効果を示す非鉛系圧電材料の物質設計指針を得ることを目的として研究を遂行した。その結果以下に示す研究成果が得られた。 (1)透過型電子顕微鏡の中間レンズおよび投影レンズの電流値を制御することによって、カメラ長3 kmを実現した。 (2)小角電子回折パターンとフーコ像を同一領域から同時に得られる電子光学系を実現した。 (3)本手法を用いてBaFe10.35Sc1.6Mg0.05O19におけるフェリ磁性相でストライプ磁区構造が形成されており、磁場印加により磁気渦構造が形成されることを見出した。また、磁場印加によりストライプ磁区内にカイラリテイの反転を伴う領域が形成され、そこを核として磁気渦構造が形成されることを明らかにした。 (4)本手法を用いて、巨大磁気抵抗マンガン酸化物での磁気的微細構造を調べた。その結果、La1-xSrxMnO3(x=0.175)において、磁場印加によりストライプ磁区構造から磁気渦構造への形成過程を明らかにした。
|