研究課題/領域番号 |
25610077
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
石原 一 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60273611)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 金属アンテナ / 量子ドット / ナノギャップ / 超蛍光 / エネルギー透過 |
研究概要 |
25年度は以下の研究実績があった。 (1)任意形状の金属構造体と吸収体の混在する系におけるポピュレーションや発光をグリーン関数法と離散双極子近似(DDA)を用いて非線形応答まで含め計算する手法の開発に成功した。 (2)線形応答の範囲で上記DDAの離散セルの多段階分割により計算時間を短縮化する手法の開発に成功した。 (3)光アンテナなどの補助系と分子が結合した系を二準位振動子の結合モデルとして非線形応答まで含めた解析を行い、上方変換的な反転分布が生じ、さらに発光が得られることを明らかにした。 (4)遅延効果を含む超蛍光計算の定式化が完成し、上記上方変換的反転分布が発生した場合の配列系超蛍光の計算準備が出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実績の概要に記した(1)-(3)が予定通りに進捗したが、さらに26年度に予定していた超蛍光の計算手法の定式化も完了したため、計画以上に研究が進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度より、以下の手順で本格的な数値的実証を開始する。 1)金属サイズと吸収体自由度の拡張:金属アンテナのサイズは共鳴エネルギーや光との結合定数を支配する。また、吸収体の幾何学的位置と準位構造とは金属と吸収体の有効的な結合定数に影響を与える。本項目では、このような金属アンテナのサイズ依存性、吸収体準位構造の依存性を系統的に調べる。2)効率的反転分布生成条件の探索:これまでの申請者等の初等的モデルを用いた研究により、吸収体が2準位系であっても反転分布が生じることが分かっているが、一方で、これが3準位系、4準位系、あるいは振動準位を持った場合にはその効率が桁違いに改善されることも明らかになっている。この項目では、そのような準位構造を仮定して、さらに前記1)の知見も動員し、太陽光程度の微弱光で効率的にコヒーレント光源として働くための条件を積極的に探索する。3) 超蛍光生成条件との整合性についての検討:吸収体の反転分布が効率的に生成できれば、そのユニットの集合系や配列系は超蛍光などのコヒーレント光発生源としての期持たれる。本項目では前記2)で明らかになった構造をどのように配列すれば、効率的にコヒーレント光生成に繋がるかを、申請者等が最近開発した分散原子系の超蛍光計算手法を活用して系統的に調べ、新奇コヒーレント光源の提案を行う。 実験提案とまとめ本研究終盤では、上記までの研究による知見を総合し、試料作製方法、観測法を含めた実験可能な系を提案する。 本研究については、現在、試料作製可能な北大電子科研の三澤グループ、測定技術を持つ阪大基礎工学研究科の芦田グループと密に情報交換しながら進めており、本研究課題後に、実験検証のための新たな課題へ迅速に進むことが出来る準備を整えておく。また期間終盤において研究のまとめと成果の論文化を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度は当初予定より成果があり、発表件数が増えたこともあって計画より旅費等が増えた。そのために計画していた計算機の金額が不足したこと、また他のプロジェクトの関係で、25年度は想定より研究室の既存計算機を使うことが出来たことから、計算機購入を本格的な数値計算が始まる26年度に回すことにしたため次年度使用額が発生した。 当初予定にある、博士課程学生謝金と国内・国外学会発表に加えて、次年度使用額を計算機購入に充てる。その際、計算機の値下がり分を考慮し、当初予定より、低価格な計算機購入を計画している。
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