研究課題/領域番号 |
25610079
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
後藤 敦 独立行政法人物質・材料研究機構, 極限計測ユニット, 主幹研究員 (30354369)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 光物性 / 核磁気共鳴 / 表面 |
研究実績の概要 |
本研究は、固体における光励起現象を核磁気共鳴法でその場観測するための手法の開発を目的としている。光による固体の状態変化を核磁気共鳴測定の制約下で実現するため、本手法に適したプローブや、光と高周波パルスの同期化技術などを開発する。また、開発した技術を具体的な研究に応用することで、本技術を活用するための測定手法の開拓を目指す。 平成26年度は、以下の開発を行った。はじめに、我々がこれまでに開発した伝導冷却型核磁気共鳴システムをもとに、低温・光照射下で機能するプローブの開発を行った。ここでの主要な開発要素は、試料に対する光照射と効率的な冷却を同時に実現するための試料ホルダーである。前年度に試行錯誤した経験をもとに、ターゲットを薄膜試料に絞り、サファイア製の平型ホルダーと試料のコンタクト法の工夫により安定した測定環境を構築した。 また、これと平行して、「光と高周波の同期化技術」の開発を開始した。この技術は、励起光と複数の高周波電磁波を一体的に制御することで、光照射時点から核磁気共鳴測定までの遅延時間の系統的な変化を測定し、光照射後の状態変化を追跡することを目的とするものである。光源に強度変調機能を持たせ、それを核磁気共鳴分光計の出力で制御することで、励起光のタイミングと高周波パルスとの同期を実現する。本年は、そのための基盤技術として、励起光の導光システムの開発を行った。これは、LEDが発する光を石英ファイバーと真空アダプターを介してクライオスタット内の真空槽に設置されたプローブへと導光するものである。これまでに、LEDのセットアップとファイバーカップリングが完了した。今後、真空アダプターを設置するためのプローブの改造を進め、システムの完成を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
励起光と複数の高周波電磁波の同期化を実現するためのシステムの開発に着手し、導光システムの開発に目処が立った。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度に引き続き、励起光と複数の高周波電磁波の同期化を実現するためのシステムおよびパルスシーケンスの開発を進める。光照射時点からの遅延時間を系統的に変化させて核磁気共鳴測定を行うことで、光照射後の状態変化の観測を目指す。 具体的には、まず、光ファイバー用の真空アダプターをプローブに取り付けるための改造を行う。その後、プローブの真空テスト、ファイバーの導光テスト、試料の冷却テストを行い、システムの完成を目指す。次に、核磁気共鳴分光計の高周波及びパルス出力部分を改造し、それをLEDの強度変調機構と組み合わせることで、励起光と高周波パルスの同期化を実現する。併せて、全体を制御するためのパルスシーケンスの開発を進める。 これらの開発により光と高周波の同期化技術を完成させ、最終的にターゲットとする試料での測定の実現を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品費の節約により、直接経費の一部を次年度使用額に回した。
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次年度使用額の使用計画 |
翌年度の消耗品費に充当予定。
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