今後の研究の推進方策 |
今後は,まず本年度作製した圧力セルの改良をさらに進める。アンビルおよびガスケットまわりのデザインおよび圧封に関しては,確立することができた。今後の改善としては,圧力セル本体の発熱を押さえることにある。その方策の一つとしては,圧力セルのうず電流が流れる経路を押さえるため,窓をつくる。これにより強度は犠牲になるが,強度と温度上昇を押さえることに関しての最適条件を探る。また,圧力セル本体として,金属とプラスティックのハイブリッド化を図る。今年度はプラスティックのみの圧力セルも作製したが,ブリッジマン方式では,プラスティックだけでは強度が足りないことが明らかとなった。そこで,ハイブリッド化により,さらに温度上昇を抑えることを目指す。また測定対象としては,結晶構造に反転対称性を持たない圧力誘起超伝導体CeTX3 (T: Co, Rh, Ir; X : Si, Ge) がある。中でも CeIrSi3 は,50 T でも壊れない反強磁性と 40 T を超えると推 測される大きな上部臨界磁場磁場 Hc2 を有している。そこで,反強磁性体 CeIrSi3 の (T , H, P ) 相図 に関して,特に強磁場領域を探索する。図2 (a) に,Hc2 の温度依存性を示す。超伝導転移温度 Tc は 約 1.5 K と低いが,Hc2 は強結合的に降温とともに大きくなり,超伝導マグネットで実現可能な磁場を 大きく超え,Hc2(0) は 40 T を超えそうである。この強磁場領域の Hc2 を調べたいと考えている。また,CeRhIn5 では CeCoIn5 や CeIrIn5 に対して,H ∥ [001] と H ⊥ [001] 方向で Hc2 の異方性が逆転している。これには磁場誘起反強磁性相と磁場中での量子臨界点が関与していると考えられる。このような系 の実験も進めたいと考えている。
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