研究課題
CeRh2Si2のようなイジング型の反強磁性体では,磁場は反強磁性秩序を破壊したり(H=Hc),また偏極した常磁性状態を誘起する(H=Hm)。これら二つの現象は,1次のメタ磁性転移を伴なって同時に起きる場合もあれば,反強磁性秩序の破壊が,磁場誘起のメタ磁性よりも低い磁場で起きることもある。CeRh2Si2では,これが同時に起きている。一方,常磁性体CeRu2Si2にRhをドープした系では,反強磁性秩序が誘起されるとともに,HcとHmの分離が観測されている。ドーピングに比べて圧力は,反強磁性セリウム化合物を量子臨界点へと導く上でクリーンな手段である。圧力はHmを増大させる一方,Hcを減少させ,HmとHcの分離を引き起こすものと期待される。これをCeRh2Si2で検証すべく,本研究では,パルス強磁場を用いた数十Tの強磁場中でも極低温・高圧実験を可能とする圧力セルの開発をめざしている。昨年度の非金属アンビルおよびガスケットの開発に引き続き,本年度は,フランスCEAのD. Braithwaite博士と協力し,アンビルを支える圧力セルの本体にスリットを4箇所入れ,渦電流の発生を抑えた圧力セルの製作を行った。その結果,4.5 GPaの高圧力,1.5 Kの極低温,60 Tの強磁場での実験が可能となった。この圧力セルを用いて,トゥールーズのパルス強磁場施設で,W. Knafo博士とCeRh2Si2のメタ磁性の研究を行った。Pc=1GPaより低圧では,一つの鋭いメタ磁性がHcで観測される。Hcは加圧とともに減少していく。しかしながら,Pcに近い圧力では,Hcより低い磁場にブロードな肩構造がH=Hmで磁気抵抗に観測された。加圧によりHcとHmが一致したのち,ブロードなピークとして,Hmがさらに増大していくことを見出した。これらの結果は,当初の期待を裏付ける結果である。
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J. Phys.: Conf. Ser.
巻: 592 ページ: 012006
10.1088/1742-6596/592/1/012006
巻: 592 ページ: 012149
10.1088/1742-6596/592/1/012149