本研究の目的は面共有酸素八面体をもつ複雑酸化物の基礎物性測定を通じて、未知のメカニズムによる新超伝導体を探索することであった。取り扱った物質はBa2Ru4O10、BaIrO3、Ba3MRu2O9、CaRuO3、NdCrTiO5と多岐にわたっている。残念ながら新型超伝導を発見することはできなかったが、Ba3Ru4O10およびBaIrO3の相転移の機構を面共有構造から解き明かすことに成功した。またBa3ZnRu2O9において新規なスピン液体と思われる状態を見出した。これは二量体中の5d電子がスピン一重項を形成し、長距離磁気秩序を作らない状態であり、新規な超伝導を生み出す舞台になりえる。
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