研究課題/領域番号 |
25610097
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
大貫 惇睦 琉球大学, 理学部, 客員教授 (40118659)
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研究分担者 |
辺土 正人 琉球大学, 理学部, 准教授 (00345232)
眞榮平 孝裕 琉球大学, 理学部, 准教授 (20372807)
仲間 隆男 琉球大学, 理学部, 教授 (80264472)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 高融点金属化合物 / 結晶反転対称性の破れ / ドハース・ファンアルフェン効果 / フェルミ面 / 磁性 |
研究概要 |
結晶反転対称性の破れ,新しいタイプの磁性をキーワードに高融点金属化合物の純良単結晶を育成し,ドハース・ファンアルフェン効果等の実験を通して,その電子状態を明らかにすることを目的として研究はスタートした。研究のきっかけとなったVSi2 に引き続き,NbSi2(融点 1940 ℃)と TaSi2(融点 2200 ℃)の単結晶をテトラアーク溶解炉の引き上げ法で育成した。残留抵抗値ρ0 と室温の抵抗値と残留抵抗値の比RRR は,NbSi2 で ρ0 = 0.074μΩcm, RRR = 630, TaSi2 でρ0 = 0.014μΩcm, RRR = 2200 であった。極めて純良な単結晶が育成され,ドハース・ファンアルフェン効果の実験とバンド計算からそのフェルミ面の性質が明らかにされた。これらの化合物の結晶構造は,六方晶の基底面を c軸方向に60°回転したのが第2層の面で,更に60°回転すると第3層面となり,更に60°回転するともとの基底面となる。VSi2 と TaSi2 は回転が時計回りで積層した(P6422)だとすると,NbSi2 は反時計回りの積層(P6222)で,いわゆる典型的なカイラル構造であることが分かった。それに伴うフェルミ面の分裂も明らかにした。これらの化合物以外に,高融点化合物として EuPd3(融点 1427 ℃)の単結晶育成に初めて成功し,フェルミ面の性質を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
結晶反転対称性の破れた結晶構造は様々あるが,一番典型的なものはいわゆるラッシュバ型と呼ばれ,例えば正方晶のCeIrSi3 では正方晶の[001]方向に鏡映対称性がない。ラッシュバ型と並んで典型的な結晶反転対称性の破れたものとしてカイラル構造がある。本研究ではカイラル構造の典型化合物に出会ったことになる。この研究は昨年の Int. Conf. Strongly Correlated Electron Systems (Tokyo) で招待講演として発表された。発表後国内の2つの研究グループとドイツの1つの研究グループから試料提供が求められ,研究は発展している。フェルミ面の分裂は扁平な主要フェルミ面に関して TaSi2 で 493 K,NbSi2 で 209 K,VSi2 で 19 K であることがわかった。Ta, Nb, V の 5d, 4d, 3d 電子がフェルミ面を形成しているが,その分裂は Ta の5d電子が一番大きことが分かった。 また,EuPd3 では,Eu化合物は通常は Eu 2価の磁性体となるが,EuP3 は Eu 3価となって磁気秩序を起こさず,そのフェルミ面を中心とした電子状態が明らかにされた。Eu 3価でのフェルミ面の性質が明らかにされたのは初めてである。
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今後の研究の推進方策 |
1) NbSi2 と TaSi2 (VSi2) で2つに分裂したフェルミ面の伝導電子のスピン構造が異なっている。これを何とか物性の実験手法で明らかにしたい。 2) Eu化合物は高融点で Euの蒸気圧が高いなどから純良単結晶育成が一般的に難しい。昨年度 EuPd3 の純良単結晶育成に,モリブデンるつぼに原材料を入れてシリコニット炉を使ったブリッジマン法で育成に成功した。これをはずみに,EuIr2Si2,EuRh2Si2 の純良単結晶育成を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
現在、世界的なヘリウム不足が発生しており、今年度以降も供給不足が懸念される。よって、今年度以降の液体ヘリウム不足を鑑み、次年度へ予算を先送りした。 今年度に液体ヘリウムの値上げや実験の進展によって、消費量の拡大が予想される。今年度予算で液体ヘリウム使用額が予算の大部分を占めることが予想され、繰り越し分を含めた予算で措置する予定である。
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