研究実績の概要 |
結晶反転対称性の破れ,新しいタイプの磁性をキーワードに,高融点金属化合物の純良単結晶を育成し,ドハース・ファンアルフェン効果等の実験を通してその電子状態を今年度も研究した。正方晶の[001]方向に鏡映対称を持たないラッシュバ型のSrTGe3 と EuTGe3 (T: Co, Rh, Ir, Ni, Pd, Pt) の単結晶を育成して,SrTGe3 の新たな超伝導の発見,反強磁性体 EuIrGe3 の磁化曲線からジャロシンスキー・守谷相互作用に基づくヘリカル磁性の可能性を提案した。その他,立方晶で4回軸対称性のないCoS2 と CoSe2 の電子状態を明らかにした。CoS2 はキュリー温度 122 K の強磁性体で,0.93 μB/Co という極めて大きな磁気モーメントを持つにも関わらず,主要フェルミ面が 13 m0(m0:電子の静止質量)という大きなサイクロトロン有効質量を持つことが本研究で明らかにされた。エネルギーバンド理論との対比の結果,CoS2 はフェルミ面が↑スピンからのみ構成されるハーフメタルであること,Co-3d 電子相関も強いことが分かった。常磁性体の CoSe2 のフェルミ面の極値断面積に対応するドハース振動数の角度依存性に4回軸対称性の破れが反映されていた。
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