研究課題/領域番号 |
25610098
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
山口 明啓 兵庫県立大学, 高度産業科学技術研究所, 准教授 (70423035)
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研究分担者 |
多々良 源 独立行政法人理化学研究所, 基幹研究所, チーム長 (10271529)
内海 裕一 兵庫県立大学, 高度産業科学技術研究所, 教授 (80326298)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | スピントロニクス / 電子・電気材料 |
研究概要 |
磁性体の磁化反転機構は、古くから研究されており、基礎学理だけではなく応用技術にも極めて重要である。最近、申請者らは外部磁場ではなく、電流によるスピン角運動量移行を励起させることによって、磁化反転や磁壁駆動を誘発することを実証した。電流による磁化反転および磁壁駆動は、不揮発性磁気メモリ等に応用されているが、電流を伴うため、発熱や書き込み電流密度が高いことが問題となっている。現在までに外部磁場と電流による磁気制御以外は報告がない。本研究では、新奇な磁化反転機構として、固体の結晶構造において、磁気モーメントと格子が直接結合していることに着目して、固体中を伝播する格子振動よって、磁壁駆動を誘発する実証実験とその物理機構の究明を行う。 格子振動による磁性体の磁化反転機構を調べるために、単一磁壁構造を有する細線を電子線リソグラフィーやリフトオフ法によって、表面弾性波生成基板上に作製した。本年度は、試料構造の最適化を図るために、圧電体単結晶基板上に櫛形電極構造を作製して、その表面弾性波特性を調べ、磁壁駆動を誘起するための表面弾性波モードの特性評価を行った。その結果、櫛形電極構造の形状によって、表面弾性波の振幅特性が変化したり、反射波等が出現することが分かった。次に、圧電体単結晶基板上に作製した磁性体について、磁性特性を調べるために、マイクロ波入力による整流特性評価を行った。その結果、マイクロ波による強磁性共鳴を検出することができたが、薄膜生成のプロセスの不備によって、磁性細線の磁気特性が非常に劣化していることも分かった。試料作製のプロセス改善による試料作製と試料構造の最適化が必要なことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要で説明したように、試料作製時における薄膜形成行程にトラブルがあり、この解決のために薄膜形成装置の分解・組み立てを行い、時間がかなり経過した。別の研究者や研究機関に協力を仰ぎ、試料構造の形成には至ったが、やはり試料構造の重要な部分で試料の劣化が起きたため、当初検出できると考えられた物理応答特性が得られておらず、プロセスの見直しが必要となったためである。
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今後の研究の推進方策 |
試料作製工程の全面的な見直しと薄膜作製用装置の全面的な改修作業が必要である。現在、装置を分解して、改修を行っており、それが完成した後、薄膜作製を行う。成膜した薄膜の物理特性を評価して、所望の特性を確認した後、研究対象となる試料構造の作製と物性測定を行う。薄膜装置の改修がうまく進まない場合は、別の研究機関や研究者との連携関係により、試料構造の作製を行い、物性測定を系統的に行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験に必要な成膜装置の不具合により、年度途中で一時的に研究を中断し、成膜装置の修理・改修を行っていたため、予定の物品購入等の見直しを行ったため。 成膜装置の修理・改修費用に使用する。また、余剰が出れば、薄膜成長用のターゲット購入に充てる。
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