対称性の破れを用いた相分類は物理学全体において幅広く用いられ、対称性の自発的破れは普遍性ある概念として確立しているが、近年物性論においては、この対称性の破れを直接用いることなく相を分類することの重要性が理解されるようになった。これがトポロジカルな観点からの物質相の理論である。 通常の相転移おいて相の対称性を記述するものが秩序変数であるが、このトポロジカル相においてその対応物として幾何学的位相をもちいることを私は提案してきているが、本研究においては実フェルミオンのしてのマヨラナ表示を用いて幾何学的位相を議論することを行ってきた。 その過程においていくつもの興味深い発見があったが、とくにボゴリューボフドジャン方程式をマヨラナ表示で議論することで、幾何学的位相の階層性に関する興味深い事実があきらかとなり、昨年以来その結果を論文としてまとめつつある。ただ、最近行った包括的な文献調査により、新たな発見と考えていた部分のごく一部ではあるが、全く異なる分野において過去に明らかとされていたことが明らかとなった。よって、現在、その既知の部分と新しい部分とを切り分けた上で論文化する作業を遂行中である。 特にこの研究過程において、量子エンタングルメントをより積極的に用いた幾何学的位相により新しいトポロジカルな秩序変数を構築できる可能性があきらかとなり、その有効性に関して、複数の論文とし年度内に公表した。これは、当初の特定の目的からみたときには、ある種の副産物の成果ではあるが、まさに萌芽的な研究計画から得られたもので、今後の展開が望み得る萌芽的な研究成果でもある。
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