研究課題/領域番号 |
25610102
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
福島 孝治 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (80282606)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 物性基礎論 / 統計力学 / 計算物理 / データ駆動 / アルゴリズム / 画像データ |
研究概要 |
本研究課題の目的は、走査型トンネル顕微鏡に代表されるミクロな測定から得られる実空間のメージング画像データの新しい解析方法の模索である。特に、単なるノイズ除去ではなく、背後にある物理描像を抽出する方法論の発展を考えていて、本年度は得られたデータを出発点としてある理論模型の持つパラメーターを推定する計算物理的方法の開発を研究した。具体的には、Cu(110)面上へのカリウムなどのアルカリ原子の吸着による表面再構成の問題を取り上げ、アルカリ原子に働く異方的斥力相互作用を推定する枠組みを構成した。それはベイズの定理に基づくベイズ推定として定式化され、ベイズ推定の文脈では事前分布に統計力学的モデルを導入し、ハイパーパラメータを推定することが物理モデルを推定することに相当する。具体的な計算としては大規模なモンテカルロ計算を必要がある。まずはノイズの入った人口データの解析を行い、有効相互作用として、これまでに提案されているAxial Next-Nearest-Neighbor Ising(ANNNI)模型のモデルパラメータをデータから再構成できることを確認した。この方法は、従来の第一原理計算からのアプローチとは異なる実験データ駆動型の新しい科学の方法論を提供しうると考えられる。この成果は現在論文にまとめている最中であるが、すでに国内の学会・研究会、およびセミナー等で多くの研究者との情報交換を通じて注目を集めつつあるとの感触を得ている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画通り走査型トンネル顕微鏡の解析方法の提案ができ、その部分の論文作成と実データ解析に向け現在進行中である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの成果発表から、方向性に関する不安は解消されつつあり、同時に幾つかも問題提起もされてきた。一つはベイズ推定に基づくデータ駆動型の方法論が物性物理の比較的広い分野に共通する方法論を展開できそうであることである。その際に、既存のデータ駆動型方法であるリバースモンテカルロ法をベイズ推定の観点から見たときの問題点を指摘することができ、改良できる可能性を研究者間で議論してきた。応用例の展開先の候補にはなっていたが、取り組む年度の順序を入れ替えて、先にこの問題に取り組むことが望ましいと考えている。データ駆動型であることには変わらないので、大きな研究方針は変更ない。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度の研究成果に関する論文作成が遅れたために、論文執筆に関わる諸経費を次年度使用に変更した。 次年度使用分は論文投稿費および英文校正など論文作成に当てて、その他は大幅な使用計画に変更はない。
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