研究課題/領域番号 |
25610103
|
研究種目 |
挑戦的萌芽研究
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
青木 健一 金沢大学, 数物科学系, 教授 (00150912)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | くりこみ群 / 離散量子力学 / 転送行列 / 長距離相互作用 |
研究概要 |
有限レンジくりこみ群の基本的な構成要素として、時間方向に有限レンジで広がったシステムの拡張された転送行列の構造について、まず厳密解が得られる単純な場合から調べ、その一般的な性質を研究した。 最初に、連続極限で調和振動子になることが予測される転送行列の形を仮定し、そのくりこみ群解析を行った。転送行列は指数の肩に2変数2次式が載った形とした。ひとつのサイト変数を積分することによって定義されるくりこみ変換は解析的に書き下すことができて、しかも、その解析解を得ることに成功した。これは、時間方向の格子間隔を有限に保ったまま得られている。得られた解析解に対して、時間方向の格子間隔をゼロにする極限をとることができて、それはよく知られている調和振動子の場合の解を与えることを示した。 次に、この系の転送行列について、直接的に、その固有値、固有関数を求めた。これらは、離散量子力学とも言える系であり、通常の連続量子力学の場合の生成・消滅演算子に対応する演算子を書き下し、固有状態を構成することに成功した。この結果は、上記のくりこみ群解析による結果と正確に対応している。 続いて、複数のサイトをブロック化した場合の転送行列を解析した。複数サイトをまとめて状態表示した転送行列はエルミート行列にはならないが、その固有値と固有関数を離散的な1サイト転送行列の固有値を用いて、一般的に表現することに成功した。これは、調和振動子に限らず一般のポテンシャルに対して適用可能な形式であり、今後の展開に有用なものである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画においては、長距離相互作用の入った転送行列の数値解析を行う予定であった。しかし、比較的厳密に議論可能な系を用いて、転送行列の一般的な性質、固有値の分布、固有関数の表現方法等の知識をまず十分に獲得することが最終的に行う数値解析を効率良く進めるために重要であると判断し、解析的な計算に限定して、いくつかの分析を進めることにした。そのため、転送行列固有値の数値解析までは届かなかった。しかし、この方針によって、転送行列の重要な性質、特に、複数サイトをまとめてブロック化したときの表現形式について、新しい知見を得たこと、厳密に解析可能な場合に、これまで知られていなかった定式化を発見し、離散量子力学の構成を得たことは大きな進歩であったので、総合的にみれば、順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は、申請時の内容とほとんど異ならないものである。しかし、これまでの解析的な分析によって、転送行列の性質、ブロック化した転送行列の表現形式などについての知見が増加したので、実際に数値的な解析を行う場合の効率が、当初の予測よりも大きく改善できると期待している。 具体的には、転送行列の最大固有値に属する固有状態を求め、そこに外場をかけたときの固有状態のゆがみを評価し、そこから、系の局在化感受率を求めるという方法を進めることになる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
解析的な計算部分の実行に予想以上の時間がかかったために、連携研究者との打ち合わせおよび関連研究会への参加が未実行となったため、旅費の使用実績が減額となった。 必要な打ち合わせは次年度に行うことになり、そのための旅費として次年度使用額を利用する。また、大きな国際会議が次年度に行われることになり、そこでの打ち合わせと発表に活用する。
|