研究実績の概要 |
本研究における最初の目標は、可解格子模型の相関関数、相関長、平衡形の計算で発見された普遍的代数曲線の構造が、解けない模型についても適用できることを示すことであった。(1)第一の成果として、(相関関数を動径方向に計算するのではなく、)ある適当な距離で固定した円形領域についてモンテカルロ法で解析する方法を提案、この新しい方法で非常に高精度で相関長を方位依存性含めて決定することに成功した。 主に対称とした模型はポッツ模型であり、状態数 Q>4 の一次転移点直上は八頂点模型の特別な場合(六頂点模型)と等価になり、普遍的代数曲線の構造が厳密計算で示されていた。平成25年度の結果では、正方格子上のポッツ模型高温相において、(i) 相関関数を高精度で解析することに成功、(ii) 相関関数は種数1の代数曲線で極めて良くフィットできること、(iii) 状態数 Q の変化に対応して曲線の変形があり、変形は曲線パラメータ1つで定量評価できることがわかった。平成26年度の結果として、三角格子上のポッツ模型について、(i), (ii) の点は正方格子模型の場合と同様であるが、(iii') 状態数 Q が変化しても、曲線の形は変わらない(温度を取り直せば相関長は方位依存性含めて重なってしまう)ことが確認された。 以上の解析結果より、(2)普遍的代数曲線の構造が解けない模型についても適用できることが示せたことになる。(3)全般に代数曲線は、SN 関数でパラメトライズされる特異曲線になり、代数幾何の基本概念である双有理同値の概念が、格子模型の臨界現象の解析(特に繰り込み群の方法)に有効であることが指摘できる。(4)また、(iii') については格子の点群対称性より予言される特徴であり、可解模型の原理とも関係することが予想される;この点について、更なる解析が進行中である。
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