研究課題/領域番号 |
25610109
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
守 真太郎 北里大学, 理学部, 講師 (70296424)
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研究分担者 |
高橋 泰城 北海道大学, 文学研究科, 准教授 (60374170)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 情報カスケード / 相転移 / 普遍類 / 有限サイズスケーリング / バンディット問題 / 集合知効果 / 集団実験 |
研究実績の概要 |
(1)情報カスケード転移の普遍類を明らかにするために、最初の玉の色と後の玉の色の相関関数の漸近解析を行った。系がスケール不変な構造を持つため、有限サイズスケーリングでは意味のある極限への外挿が不可能なため、有限サイズ補正項を数値的にもとめ、その関数形をもとに熱力学極限での振る舞いを調べることを提案し、相転移点において相関関数が対数関数のべき則に従うことを示した。 (2)ネットワーク上の情報カスケードのモデル(非線形ポリア壺)を確率微分方程式と数値計算(有限サイズスケーリング)により解析した。ネットワーク構造は情報カスケード転移の閾値には影響せず、収束のべき指数に影響することを見出した。 (3)前年度の壺を用いた情報カスケード実験の追試を行い、自己情報の精度が高い場合、正答率の収束する値の個数が一個になることを明らかにした。前年度のデータでは、自己情報の精度の値によらず、正答率の収束値は2個以上であるとの結果を得ていた。それと合わせることにより、収束する値の個数が自己情報の精度の変化により引き起こされることが分かった。二択のクイズでのクイズの難易度の変化による収束値の個数の変化と同じマクロな変化であり、情報カスケード転移の実験による2例目の検証に成功した。 (4)非定常多腕バンディットにおいて、社会的学習を含めた効率的な選択に関する研究を行った。単純なアルゴリズムで選択する多数のエージェントと対戦するプレイヤーの最適戦略を、環境の変化する確率と非社会的学習のコストの2個のパラメータ空間で求め、集合知効果の創発条件を明らかにした。また、集団実験を実施し創発条件を検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)25年度に未完成であった非線形ポリヤ壺過程の非平衡相転移について、その普遍類をほぼ完全に分類した。 (2)ネットワーク構造が情報カスケード転移にあたえる影響・普遍類を解明した。 (3)情報カスケード転移を示す実験として、従来の二択のクイズとは別に、実験経済学で盛んに研究されている壺の選択のカスケード実験を行い、自己情報の精度の変化により相転移が起きることを示した。 (4)多腕バンディット問題において集合知効果の創発条件・実験による検証を行った。 (5)競馬のオッズの時系列データの解析、分割投票実験の実施が行えていない。
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今後の研究の推進方策 |
3年目の計画では、2年目までの実験の追試と今後の研究の萌芽を探すことになっていた。情報カスケード転移については、その普遍類、異なる実験による検証など、理解は相当深まったと考えている。今後の研究は、こうした研究で明らかになったヒトの相互作用の法則をもとに、相互作用によるゆがみを補正した情報の推測方法の開発とそれに関連する集団実験を考えている。また、そうした視点で、競馬のオッズの時系列データ、巨大掲示板の書き込みのデータの解析を行う。バンディット問題に関しては、集合知の創発条件をより一般のものとするため、エージェントのアルゴリズムをベイズ的なフィードバックをいれたシステムを解析し、集団実験による検証を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末の出張がなくなったため残額が生じました。
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次年度使用額の使用計画 |
年度末の出張で見込んでいた研究打ち合わせを早急に行います。その他変更はありません。
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