研究課題/領域番号 |
25610113
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鳥井 寿夫 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (40306535)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | レーザー分光 / レーザー冷却 / 放電 |
研究概要 |
689nm狭線幅レーザーの開発のために、Eagleyard社製反射防止膜(AR)付き半導体レーザー(EYP-RWW-0690-00703-1000-SOT02)を購入し、外部共振器(Littrow配置)に組み込んだ。半導体レーザーのゲイン中心(約685nm)が所望の689nmから離れていたため、689nmにおける発振閾値は90mAと比較的高かったが、115mAの注入電流で約20mWの出力を得た。ストロンチウムのスピン禁制遷移(1S0-3P1)の分光を行うための原子オーブンの設計を行った。将来的にストロンチウムの磁気光学トラップを行うことを想定し、スタンダードなヒートパイプ方式ではなく、ステンレスキャピラリーチューブを用いた原子ビーム方式を検討した。後者にはドップラー広がりを縮小できる利点と、原子数密度が減少する欠点があるが、両者が量的に相殺し、結果的に十分な光学密度で分光できることが計算で示された。原子オーブンの設計と同時に、ストロンチウム原子のホローカソードランプを用いたスピン禁制遷移の観測を試みた。バッファガスを通常のNe:6Torrではなく、Xe:0.5Torr+Ne:0.5Torrとした特注のランプを用いることにより、20mAの放電電流で約1%の吸収を観測した。しかしながら、Xeを混ぜたことによる気体の熱伝導率の減少によって、カソードの冷却効率が落ちたために、長期の安定動作は得られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ストロンチウム金属の蒸気圧曲線(クラウジウス-クラペイロンの式)に関する情報が文献によって異なり、研究者の間でも混乱した状況が続いていることがわかった。そのため、信頼できる情報が得られるまで、オーブンの作成を延期することにした。
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今後の研究の推進方策 |
ステンレスキャピラリーチューブを用いた原子ビームオーブンを製作し、昨年度に用意した689nm外部共振器レーザーを用いて、スピン禁制遷移(1S0-3P1)の分光を行う。十分な光学密度が得られたなら、円偏光のポンプ光と直線偏光のプローブ光を原子ビームと垂直に、互いに対向して入射して偏光分光信号を観測する。その信号を1MHz帯域のサーボ回路に導入し、バイアスTを介して半導体レーザーにフィードバックすることにより、レーザー線幅の狭窄化を試みる。線幅の測定のために、(1)原子ビームを用いて線幅狭窄化した独立な2台のレーザー光のビート測定、(2)誤差信号のスペクトル解析、の何れか、もしくは両方の手法を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
ストロンチウム金属の蒸気圧曲線(クラウジウス-クラペイロンの式)に関する情報が文献によって異なり、研究者の間でも混乱した状況が続いていたため、信頼できる情報が得られるまで、原子オーブンの作成を延期することにしたため。 おおむね信頼できるストロンチウム原子の蒸気圧曲線がわかったので、それを基礎データとして原子オーブンの作成を平成26年6月までに行う。
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