研究課題/領域番号 |
25610118
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
箕田 弘喜 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20240757)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 環境制御電子顕微鏡 / クライオ電子顕微鏡 / 試料瞬間凍結 / 電子線照射損傷 |
研究概要 |
我々が開発した封じ切りタイプの環境制御セル(wetセル)を利用して急速凍結を実現するために、セルの熱容量を小さくする必要がある。そのための基礎データを取得し、冷却ホルダーでの使用もできるように、セルの構造の改造を試みた。試料ホルダーの満たすべき性能として、①熱容量が小さく、②冷却による真空漏れがなく、③冷却ホルダーでのテスト実験ができるような構造に改良する必要がある。この点を念頭にwetセルの改良を行い、冷却ホルダーに取り付けてテストを行った。主な確認点は、 ①冷却時間が短く、到達温度が低いこと。 ②冷却時に漏れによる電顕本体の圧力上昇が少ないことであった。 この結果をもとに、試料ホルダーの構造についての検討を始め、ホルダー作製を行う予定の業者との打ち合わせも終了し、ホルダーの外形について検討を進めた。 さらに、ホルダー完成後の実験のために既存の装置でできる予備実験として、電子線照射ダメージを調べるための実験を行った。具体的には、生物分子の試料に対して、wetセルを用いた浸水状態の試料とクライオ条件の瞬間凍結試料について、電子線の照射量に対する構造破壊の程度を調べた。予備的な実験結果ではあるが、冷却条件の試料に加えて、wet条件での試料の方が、構造破壊が小さいことが、電子線照射時に得た像のフーリエ変換パターンの解析や、電子回折パターンの時間変化から明らかになった。この結果には、再現性があることも確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、我々は封じ切りタイプの環境制御セル(wetセル)を開発し、実際に浸水状態の試料の電子顕微鏡に利用できるようになっている。このwetセルは、汎用タイプの電子顕微鏡試料ホルダーでの使用は可能であるが、急速凍結を実現するために熱容量を小さくする必要がある。また、基礎データを取得するために冷却ホルダーとしての使用もできるようにする必要があり、現状のままでは問題がある。また、現状の真空シールの方式で、冷却過程において、熱収縮による真空への漏れがある可能性もある。そこで、①熱容量が小さく、②冷却による真空漏れがなく、③冷却ホルダーでのテスト実験ができるような構造に改良する必要がある。この点を念頭にwetセルの改良を行い、冷却ホルダーに取り付けて、テストを行った。主な確認点は、 ①冷却時間が短く、到達温度が低いこと。 ②冷却時に漏れによる電顕本体の圧力上昇が少ないことであった。 この検討結果をもとに、試料ホルダーの構造について検討を始め、ホルダー作製を行う予定の業者との打ち合わせも終了し、ホルダーの外形について検討を終了することができた。H26始めより、ホルダーの部品設計にすぐはいれる状態であり、順調に研究は進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
ホルダーの設計をH26年度初頭からすぐに開始し、9月を目途に試料ホルダーの作製を終了させる。設計と並行して、既存の装置で昨年度進めていた、電子線ダメージの実験について引き続き進め、試料環境の違いによる電子線ダメージの大きさについて結論を出す。 ホルダー完成後、年内に、ホルダーの性能評価、さらには、予備実験を進めることで、ホルダー自身の持つ問題の洗い出しを行い、適宜ホルダー構造の改良を行い、ホルダーによって得られる基本性能を評価する。 苑で、基礎データを取得するための実験を開始し、nm分解能での試料凍結前と、試料凍結後の構造評価を行い、氷晶形成の有無や、凍結に伴う構造変化の程度について検証し、その場急速凍結の可能性を探る。
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