2種類の短鎖ペプチドを連結させるNative Chemical Ligation (NCL)反応を利用し、脂質ベシクルと2種類のペプチドを含む系からナノディスクが生成する系を構築した。ナノディスク生成反応はあらかじめ少量のナノディスクが存在していると効率よく進行し、その反応機構を詳細に調査した結果、ナノディスクが自己複製的に生成していることを明らかにした。 NCL反応によってhead-to-tailで逐次連結できるペプチドをデザインし、このペプチドを脂質膜と混合してナノディスクを調製した。得られたナノディスク中には、数分子から十分子ほど連結したペプチドが存在することを確認した。また、この方法で得られたナノディスクは、連結能をもたないペプチドで調製したナノディスクに比べ、非常に高い熱安定性を示した。 ナノディスクの高次構造化を検討するため、アポリポタンパク質と酸性リン脂質からなるナノディスクをコール酸透析法により調製し、この粒子にカルシウムイオンを添加した際の変化を観察した。蛍光エネルギー移動の観察から、イオン添加に伴い、粒子間距離が近接することが明らかになった。また、透過型電子顕微鏡観察により、イオン添加前に比べて添加後の試料中には連銭状の構造体の割合が多く含まれていることが判明した。このような特性は、ナノディスクの脂質組成や脂質膜の相状態に依存することも明らかになった。これらのことから、イオンの添加によって溶液中でスタックさせるという、ナノディスクの高次構造化の制御を達成することができた。
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