研究課題/領域番号 |
25610126
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
水谷 隆太 東海大学, 工学部, 教授 (70272482)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 神経回路 / マイクロトモグラフィ |
研究概要 |
脳の神経回路は、多数のニューロンがネットワークを形成して成り立っている。脳神経回路の解析は、(1)脳組織を三次元的に可視化し、(2)得られる三次元像を解釈してネットワークモデルを構築し、(3)これを神経回路に変換する、という3ステップで行われる。このようなニューロンレベルでの神経回路の研究は世界的にも緒についたところであり、ステップ2のモデル構築も手作業で行われるのが現状である。このため、解析に多大な時間と労力を要し、ネットワーク構造を構築した報告は少数に限られる。そこで本申請では、専用のアルゴリズムを用いて三次元像を機械解釈させ、モデル構築を自動化することを目的として研究を進めている。 神経ネットワークは、ニューロンの細胞体の粒状構造と、そこから伸びる軸索・樹状突起の線状構造から構成されている。自動的にモデル構築を行う上で、この線状構造を適切に検出する段階がポイントになる。そこで本年度は、そのような構造に特異性をもつ方法を検討する等、研究のベースとなる項目を進めた。画像から線状の構造を抽出する方法は、いくつか報告されてきており、それを実際のヒト脳組織の三次元構造に適用し、構造を検出できる度合いや、誤検出の頻度等を検討した。これらには、物品費により整備した計算機環境が有効であった。 また、解析の対象となる検体の測定を行った。これまでの経験では、症例あるいは部位が異なると、解析像も異なった様相を示すことが明らかとなっている。そこで、様々なケースでトレースが可能かどうか検証するため、複数の検体を用いて測定を行うこととした。そのための旅費を計上・執行し、実際に放射光施設に赴いて実験して、測定データを得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、あらかじめ想定できない解析上の困難もあり得たが、測定により得た試験データを用いることで、様々な方法論上の検討を迅速に行うことが可能であった。また、測定実験においては、これまでのヒト検体の取り扱いや、放射光測定の経験を生かすことで、効率的に研究を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
神経ネットワーク構造の構築には、神経細胞とそれ以外の構造を区別する必要がある。これには、解釈や判断の問題があり、ある程度の人的介入を要することはやむを得ないが、そのための作業環境を構築することにより、迅速な解析を可能としていく。 ヒト組織を研究で用いることに関しては、倫理的に適切な形で進めることが必須である。これまで、所属機関でのヒト組織を研究で用いることの倫理に関する委員会や、関連する医療機関・研究機関での臨床研究に関する倫理審査等を受けている。今後の研究においても、これら審査で認められた条件を遵守して研究を実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
計算機環境として専用のワークステーションを計画していたが、今年度の研究で実際の解析で有効な計算アルゴリズムが明らかとなった。これにあわせて、ワークステーション本体を更新することなく、当該アルゴリズムに適した計算ボード等を購入した。差額分は年度内にも有効活用するとともに、一部を次年度使用とすることとした。 今後も予想される結果を複数想定して、予算項目を設定していくが、方法論の検討結果によっては執行額が増減することも見込まれる。多様な状況に対応して円滑に研究が進められるように、例えば解析結果を保管する大容量ストレージに使用する等、複数の選択肢を設けておく。
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