研究実績の概要 |
今年度は以下のように研究を進めた。
研究室で所有する光ピンセット装置(Cobolt社製赤外レーザー、シグマ光機製ミラー・レンズ、Nikon製光学顕微鏡を組み合わせてシステム)の改良を行った。1) まず、レーザーの光路にシグマ光機製の偏光ビームスプリッターと1/2波長板を挿入して、レーザー光軸を2本に増やした。このセットアップにより、2種類の微粒子をそれぞれ異なる位置で光トラップできることが確認された。更に、ガルバノミラーを用いてレーザーの光路を変動させることで、補足した微粒子の位置を自由に制御できるように調整した。このシステムを用いた今後の研究として、2本のレーザー光が誘起する非線形振動の時空間パターンの観測を予定している。例えば、臨界点近傍の1相状態にある2,6-ルチジンの水溶液にレーザーを照射させることで、2,6-ルチジン微小液滴の生成・消滅振動が生じることがこれまでの研究で明らかになっているが、この生成・消滅振動を2つのスポットで誘起させた場合、引き込み・同調などのパターンが観測されると期待している。
2) 次に、光トラップした微粒子の熱運動の様子を4分割フォトダイオードを用いて観測するシステムを構築した。前年度までは、微粒子の熱運動を画像解析から調べていたが、4分割フォトダイオードを用いることで空間分解能を1μmから10nm、時間分解能を30msから10μsスケールに向上させることができた。残念ながら、年度内での研究目的の遂行は出来なかったが、今後も研究を続け、微粒子に外場を加えた際の熱運動の変化の様子を詳しく分析しながら、微粒子に加わる局所的な力の観測(マイクロレオロジー実験)を行うことにより、有効温度の定量的な評価、その破れについて議論を行う。
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