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2014 年度 実施状況報告書

ミュオンスピン回転法によるケイ酸塩鉱物中の水素の振る舞いの研究

研究課題

研究課題/領域番号 25610130
研究機関東京大学

研究代表者

船守 展正  東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (70306851)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワードミュオンスピン回転法 / スティショバイト / ミュオニウム / 中性水素原子 / マントル
研究実績の概要

今年度は、前年度までに実施したミュオンスピン回転実験の結果、特に、ルチル型SiO2(スティショバイト)中で正ミュオンが電子を束縛してミュオニウムとして存在することを好むことについて、論文として学術雑誌に発表することに全力を挙げた。この実験手法が地球惑星科学において前例のないものであり、また、実験結果がマントルにおける水素の存在形態に関する定説、すなわち、水素が水酸基(=水)として存在することに疑問を呈するものであったために、出版までに多くの時間と労力を要した。実験結果に基づき、スティショバイト中で、水素が小さく異方的な格子間空隙に押し込められた中性原子状態で存在する可能性が高いことを示し、地球深部マントルにおける水素の存在形態としても、これまでの研究では想定外であった中性原子状態を検討する必要性について報告した。実際のマントル中に、中性水素が存在するか否かを明らかにするためには、生成エンタルピーの正確な計算など、ミュオン実験とは異なる手法も含めて、多角的・総合的に研究を進める必要がある。本課題で進めているミュオン実験に関しては、スティショバイトに関する論文の出版を受けて、現在、スティショバイトと同じ構造で異なる組成のルチル型GeO2(アーゲタイト)や地球下部マントルの最重要鉱物であるペロフスカイト型MgSiO3(ブリッジマナイト)などに対する実験結果を整理して論文として出版するための準備を進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

地球惑星科学では前例のない実験手法により、マントルにおける水素の存在形態に関する従来の定説に一石を投じる論文を出版できた。一方で、出版までに多くの時間と労力を使い、新しい実験を進めることができなかった。

今後の研究の推進方策

高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所に平成27年4月1日付で移動した。異動先は、J-PARCのミュオンビームラインを整備・運営する組織でもある。ミュオン実験の専門家との一層の連携により研究を推進する。

次年度使用額が生じた理由

第一報を学術雑誌に出版するために、予想以上に多くの時間と労力を使うこととなり、新しい実験を進めることができなかった。

次年度使用額の使用計画

地球のマントルに、中性水素が存在するか否かを明らかにするために、ミュオン実験を中心に据えながら、ミュオン実験とは異なる手法も利用して、多角的・総合的に研究を進める。ミュオン実験のための費用の他、その結果を補強するような実験や計算を行うための費用にあてる。

  • 研究成果

    (15件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (11件) (うち招待講演 4件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Solving the problem of inconsistency in the reported equations of state for h-BN2015

    • 著者名/発表者名
      D. Wakabayashi, N. Funamori
    • 雑誌名

      High Pressure Research

      巻: 35 ページ: 123-129

    • DOI

      10.1080/08957959.2015.1028931

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Muonium in stishovite: Implications for the possible existence of neutral atomic hydrogen in the Earth’s deep mantle2015

    • 著者名/発表者名
      N. Funamori, K. M. Kojima, D. Wakabayashi, T. Sato, T. Taniguchi, N. Nishiyama, T. Irifune, D. Tomono, T. Matsuzaki, M. Miyazaki, M. Hiraishi, A. Koda, R. Kadono
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 5 ページ: 8437

    • DOI

      10.1038/srep08437

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Enhanced plasticity of silica glass at high pressure2015

    • 著者名/発表者名
      D. Wakabayashi, N. Funamori, T. Sato
    • 雑誌名

      Physical Review B

      巻: 91 ページ: 014106

    • DOI

      10.1103/PhysRevB.91.014106

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] WG報告「PFの将来計画」2015

    • 著者名/発表者名
      船守展正
    • 学会等名
      研究・作業グループ「コヒーレント放射光を利用した新しい高圧力科学(II)」第1回研究会
    • 発表場所
      岐阜大学(岐阜県)
    • 年月日
      2015-03-26
  • [学会発表] BL18Cにおける高圧下その場X線小角散乱測定2015

    • 著者名/発表者名
      佐藤友子、若林大佑、西田圭佑、亀卦川卓美、船守展正
    • 学会等名
      第3回物構研サイエンスフェスタ
    • 発表場所
      筑波国際会議場エポカル(茨城県)
    • 年月日
      2015-03-17
  • [学会発表] 地球上部マントルにおけるマグマの密度と粘性の異常2015

    • 著者名/発表者名
      船守展正
    • 学会等名
      第3回物構研サイエンスフェスタ
    • 発表場所
      筑波国際会議場エポカル(茨城県)
    • 年月日
      2015-03-17
    • 招待講演
  • [学会発表] X線小角散乱で見る高圧力下のイオン液体の構造変化2014

    • 著者名/発表者名
      浜谷望、高久真由美、山村実早保、若林大佑、西田圭佑、船守展正、佐藤友子、亀卦川卓美、阿部洋、吉村幸浩
    • 学会等名
      第55回高圧討論会
    • 発表場所
      徳島大学(徳島県)
    • 年月日
      2014-11-23
    • 招待講演
  • [学会発表] 「新放射光源施設における高圧ビームライン提案書」について2014

    • 著者名/発表者名
      船守展正
    • 学会等名
      第55回高圧討論会
    • 発表場所
      徳島大学(徳島県)
    • 年月日
      2014-11-23
  • [学会発表] 高圧下その場X線小角散乱による相転移中間状態の観察2014

    • 著者名/発表者名
      佐藤友子、若林大佑、西田圭佑、横井雄行、亀卦川卓美、船守展正
    • 学会等名
      第55回高圧討論会
    • 発表場所
      徳島大学(徳島県)
    • 年月日
      2014-11-23
  • [学会発表] PF AR-NE7Aでの高圧下における弾性波速度測定2014

    • 著者名/発表者名
      西田圭佑、鈴木昭夫、若林大佑、柴崎裕樹、亀卦川卓美、船守展正
    • 学会等名
      第55回高圧討論会
    • 発表場所
      徳島大学(徳島県)
    • 年月日
      2014-11-23
  • [学会発表] ケイ酸塩メルトの中距離構造と密度・粘性の相転移的な圧力変化2014

    • 著者名/発表者名
      若林大佑、船守展正、佐藤友子
    • 学会等名
      第55回高圧討論会
    • 発表場所
      徳島大学(徳島県)
    • 年月日
      2014-11-22
  • [学会発表] Macroscopic and microscopic strain of SiO2 glass under uniaxial compression2014

    • 著者名/発表者名
      N. Funamori, D. Wakabayashi, T. Sato, T. Yagi
    • 学会等名
      IUCr2014
    • 発表場所
      Montreal, Canada
    • 年月日
      2014-08-11
    • 招待講演
  • [学会発表] 大学人から見た物構研:過去、現在、そして未来へ2014

    • 著者名/発表者名
      船守展正
    • 学会等名
      第2回物構研特別シンポジウム
    • 発表場所
      高エネルギー加速器研究機構(茨城県)
    • 年月日
      2014-05-28
    • 招待講演
  • [学会発表] 室温におけるSiO2ガラスの巨大塑性変形2014

    • 著者名/発表者名
      若林大佑、船守展正、佐藤友子
    • 学会等名
      日本地球惑星科学連合 連合大会2014
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県)
    • 年月日
      2014-05-01
  • [図書] 新放射光源施設における高圧ビームライン提案書2014

    • 著者名/発表者名
      大高理、船守展正(編)
    • 総ページ数
      71
    • 出版者
      日本高圧力学会 研究・作業グループ「コヒーレント放射光を利用した新しい高圧力科学」

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公開日: 2016-05-27  

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