研究課題
昨年度までに、地球下部マントルに特徴的な6配位鉱物(Si4+の周囲にO2-が6個存在)であるルチル型SiO2(スティショバイト)中で、正ミュオンが電子を束縛してミュオニウムとして存在することを好むことを明らかにし、学術雑誌に発表した。このミュオンスピン回転法による実験結果は、マントルにおける水素の存在形態に関する定説、すなわち、水素が水酸基(=水)として存在することに疑問を投げかけ、中性水素として格子間空隙に存在することを示唆するものである。本研究の3年目で最終年度にあたる平成27年度には、東京大学理学部ニュースでの解説、高エネルギー加速器研究機構一般公開やJ-PARC(大強度陽子加速器施設)全体会議での講演などの機会に、これまでの研究では想定外であった中性原子状態での存在可能性を検討することの必要性について説明を行った。こうした努力により、少しずつではあるが専門家の関心を集めはじめ、地球化学分野の最大の国際会議Goldschmidt2016に招待されて講演することも決まっている。一方、本研究で計画した実験については、ミュオンスピン回転法が日本で唯一可能なJ-PARCのMLF(物質・生命科学施設)が、トラブルにより長期シャットダウンしたことなどもあり、ほとんど進めることができなかった。研究期間が終了しても、中性水素の有無に関する研究を更に発展させられるよう、共同研究者との打ち合わせを行い、実験機材の整備を進めた。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
Journal of Physical Chemistry B
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