最終年度は,原始惑星系円盤の密度,木星型惑星の位置,離心率,質量をパラメーターとし,微惑星とガス円盤との相対速度の変化を数値計算した.その結果,ガス円盤の自己重力によって発生する永年共鳴が,木星のような大惑星によって引き起こされる2:1の平均運動共鳴と3:1の平均運動共鳴の間で生じると,微惑星のガス円盤に対する相対速度が最も高くなる事が判明した.原始惑星系円盤のガス円盤の密度が高いと,ガス抵抗によって,微惑星の速度は押さえられる.しかし一方で永年共鳴は木星型惑星の近くで発生することになり,より円盤の密度が低いところで微惑星は最高速度に達しやすくなる.この両者の効果が打ち消しあうために,結果は原始惑星系円盤全体の質量の変化に強くは依存せず,微惑星蒸発は,太陽系のパラメーターだけではなく,比較的一般的に生じると考えられる. 木星の軌道長半径の変化は,相対速度の最大値にはあまり変化をもたらさない.木星型惑星は現在の10分の1程度の大きさ以上で,微惑星蒸発に影響を持ち始める.また,木星型惑星の離心率が大きければ永年共鳴が強く,微惑星の持つガスとの相対速度は高くなりやすいが,その一方で,微惑星の軌道が乱された際に木星との近接遭遇が発生しやすくなり,太陽系遠方や系外に微惑星は飛ばされてしまう可能性も高くなる.ガス抵抗の弱い1000kmサイズの微惑星ではその傾向は顕著である.100kmサイズの微惑星であれば,木星の離心率は0.03以下では,相対速度は10km/sを超えることはあまりない. 十分なガス円盤が存在する時に,小惑星帯付近で微惑星とガス円盤の相対速度が10km/sを超えるような時期は,1000kmサイズの場合で10万年から1千万年の間続いており,この微惑星衝撃波は,コンドリュール形成にも寄与すると考えられる.
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