地表近くの大気の3次元風速場を測定するドップラーソーダの開発ということで、仰角と方位角の2軸で回転する台上に、送受信2つのパラボラを持つシステムの開発を行ってきた。前年度までに、2台の試作を行ったが、回転台の重量制限のための小型化が影響し十分な音響パルス指向性が得られず大気からの信号を受信できていなかった。最終年度は、送受信パラボラの構造上問題となっていたスピーカーとマイク自身の影響を低減するために、導波管を利用し、パラボラ正面からスピーカーを無くし、マイクは素子のみを利用した小型の構造を採用した3台目の試作機を製作した。これらの改良により指向性は向上し、上空計測用に市販されているソーダに匹敵する値を示した。また電気的なノイズの対策やパラボラの透過の低減、制御・解析ソフトの改良を行った。また、音響信号の強度の定量的な解析ができるところまで装置の計測を積み重ねた。しかし、年度末ぎりぎりまでの実験と改良にも関わらず送信周波数のままのパルスが受信される状況を脱することができなかった。受信信号が距離の逆2乗で減衰し、定量的にも後方散乱にしては大きいことなどから、地面での反射の影響を受けていると考えらた。サイドロブと呼ばれる側方からの信号の流量が影響したと考えられる。そこで、当初目標にあった低い仰角での観測を諦めて、防音壁による地面からの反射、および通常地表にあるノイズの遮断を検討し、高さ150cmで装置を囲む防音壁を作成したが、そこで研究期間の終了を迎えた。 今後、いままでの補助に感謝しつつ、過去の試作機の部品などを活用して開発を続ける。当面は、計算上計測できるはずのところまで来た今回製作の「ソーダ+防音壁」のシステムでの実験を行い、その後、パラボラを深くして側方からの影響を避けるものにするなどの改良を試して、本研究の当初目的としたシステムの実現に向けて研究を続ける。
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