研究課題/領域番号 |
25610138
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研究機関 | 独立行政法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
山本 真之 独立行政法人情報通信研究機構, 電磁波計測研究所センシングシステム研究室, 主任研究員 (90346073)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 大気乱流 / 大気レーダー / 自然現象観測・予測 / リモートセンシング |
研究実績の概要 |
オーバーサンプリング付きレンジイメージング(以下、RIM-OS)は大気レーダーによる高鉛直分解能の大気乱流・風速計測を実現できる観測手法であり、1.3GHz帯レンジイメージング大気レーダーの観測により大気乱流・風速計測におけるRIM-OSの有用性が示されている。広い高度範囲を計測できる50MHz帯レンジイメージング大気レーダーへのRIM-OSの実装に取り組んだ。トリガ信号取り込み機能を付加することで、研究代表者が開発した大気レーダー用デジタル受信機の機能向上を行った。機能向上を行った大気レーダー用デジタル受信機を用いることで、RIM-OSを用いた50MHz帯レンジイメージング大気レーダーによる高鉛直分解能の大気乱流・風速計測を実現した。RIM-OSを用いた50MHz帯及び1.3GHz帯レンジイメージング大気レーダーによる大気乱流観測を実施した。 レンジイメージング大気レーダーから高品質の大気乱流・風速計測データを得るために必要となる、大気エコーのスペクトルパラメータ(エコー強度・ドップラー速度・スペクトル幅)の推定手法の開発に取り組んだ。晴天領域における大気エコーのスペクトルパラメータ推定手法の開発成果をまとめ、査読付き論文に公表した。さらに、降水時における50MHz帯大気レーダーの大気乱流・風速計測に有用な大気エコーのスペクトルパラメータ推定手法の開発に取り組んだ。50MHz帯大気レーダーで取得される降水時のドップラースペクトルには、大気エコーと降水粒子エコーの双方が存在する。大気エコーが卓越して存在するドップラー速度の範囲を選び降水粒子エコーの影響を小さくすることで、降水時における大気エコーのスペクトルパラメータの推定精度を向上できることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者が開発した大気レーダー用デジタル受信機にトリガ信号取り込み機能の付加を行うことで、RIM-OSを用いた50MHz帯レンジイメージング大気レーダーによる高鉛直分解能の大気乱流・風速計測を実現した。トリガ信号取り込み機能の付加を行うことで、大気レーダー用デジタル受信機の汎用性が向上した。 大気エコーのスペクトルパラメータ推定手法の開発において、計算機シミュレーションを活用することでスペクトルパラメータの計測誤差を定量的に評価できることを示した。開発した手法は、大気乱流物理量の計測精度を定量的に評価する手段としても活用できる点で、有用であると考えている。 以上述べた通り、本研究課題はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
大気レーダー用デジタル受信機の開発及び大気エコーのスペクトルパラメータ推定手法の開発に関する成果発表のため、今年度の成果を基にした検証を実施する。検証においては、大気乱流の発生・維持メカニズムの解明につながる考察も併せて行う。検証の実施後、研究成果を発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に、レンジイメージング大気レーダー用デジタル受信機の開発と、レンジイメージング大気レーダーで取得した観測データの処理手法開発を実施した。これらの開発の実施において、開発成果の汎用性を高めることができる見込みを得た。将来の研究発展を見据え、汎用性に優れた開発成果が得られるよう計画を変更したため、未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に、デジタル受信機の開発及び観測データの処理手法開発に関する成果発表と、成果発表に必要となる検証を行いたい。未使用額は、その経費に充てることとしたい。
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