多周波切替え送信と適応信号処理を用いるレンジイメージング(RIM)と、送信パルス幅より短い時間間隔で受信信号をサンプリングするオーバーサンプリング(OS)を組み合わせたOS付きRIMを用いることで、大気レーダーのレンジ(高度)分解能を向上できる。本研究では、OS付きRIMを用いた大気レーダーによる風速・大気不安定波・大気乱流の高分解能観測により、大気乱流の発生・維持メカニズムを解明するための取り組みを実施した。 OS付きRIMを用いた1.3GHz帯大気レーダーによる高分解能観測を実施することで、サーマル等に伴う大気境界層内の鉛直流擾乱の詳細を示した。50MHz帯大気レーダーは、対流圏の上部に至る広い高度範囲を観測可能である。OS付きRIMを用いた50MHz帯大気レーダーによる、高分解能観測を実施した。50MHz帯大気レーダーによる高分解能観測を実施するため、大気レーダー用外付けデジタル受信機に、トリガ信号取り込み機能を付加した。 大気レーダーは、大気エコーのスペクトルパラメータ(エコー強度・ドップラー速度・スペクトル幅)を推定することで、風速・大気乱流に関する測定値を得る。そのため、大気エコーのスペクトルパラメータを精度良く推定することは、風速・大気乱流に関する測定値を高精度で得ることに貢献する。大気エコーのスペクトルパラメータを推定する手法の開発に取り組んだ。開発した手法では、大気エコーが卓越して存在すると判定されたスペクトルデータのみを用いて、大気エコーのスペクトルパラメータを推定する。そのため、開発した手法では、推定精度を低下させる雑音等の影響を減じることが可能である。 本研究の成果は、ストームジェネシスを捕らえるための先端フィールド観測や、高分解能・高データ品質を両立する次世代ウィンドプロファイラの開発の実施につながった。
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