研究課題
挑戦的萌芽研究
平成 25 年度は内核および外核における磁気流体の支配方程式と境界条件の定式化を行い, スペクトル法による内核外核結合数値モデルを構築することができた.外核に対する内核の影響の素過程を調べるための数値実験として, 内核表面での緯度方向に不均一な浮力フラックス分布を与えて外核内に生じる流れ場・磁場および熱的状態を求めることを行った. その結果, 一様な浮力フラックス分布および赤道で強い浮力フラックス分布の下では, 自己維持的ダイナモ解がたやすく得られたが, 極域で強い浮力フラックス分布を与えた場合には自己維持的ダイナモ解が見いだされなかった.一方, 外核での磁場から内核内部運動への影響を理論的に考察することを行った. 内核の表面が鉛直方向に変位することの影響を取り込んで, 外核からの磁場ジュール熱によって引き起こされる内核中の流れ場を吟味した. その結果, 内核外核境界における相変化の速度が十分に速ければ内核の地震波速度異方性を説明できる流れ場を引き起こせるが, 相変化の速度が遅い場合には, 地震波速度の異方性を説明するために都合の悪い内核外核境界付近に強い逆流が発生することが見いだされた.
2: おおむね順調に進展している
内核外核結合数値モデルを構築するところまで達成できたため. 平行して, 外核中の流れ場とダイナモ過程および内核中の流れ場を引き起こす素過程の数値実験および理論的考察を行うことができたため.
今後は平成 25 年度に構築したモデルの正しさを確かめるための数値実験を実行する. 内核部分のモデルのチェックには理論的に計算した外核内の磁場に対する内核の応答問題の解を用いる. 理論的考察で用いた磁場分布に外核の状態を固定し, 内核部分の流れ場温度場および磁場の時間発展を計算し, 定常解が解析解と一致することを確かめる. 一方で, 外核部分のモデルチェックには, 内球を剛体球としているダイナモベンチマークの CASE2 の解を用いる. 内球での温度を一定に固定し, 粘性率を次第に大きくしていくことにより内球の状態を剛体球に近づけることで, ベンチマークの解に近づくかどうかチェックする. 数値モデルのチェックを行った後に, 系統的な大規模数値実験を開始する. 数値実験の結果の比較のためのベースとなる解として内核を剛体球としているダイナモベンチマークの CASE2 を外核の基本的状態として用いる. 主として内核の粘性率・熱拡散率などの物性パラメターを変化させたときの内核と外核内の状態の変化を調べていく.特に注目する点として以下の項目があげられる. 地震波の観測から内核内の結晶構造の異方性と内核内の流体運動のパターンと強度が推定されている. したがって, 内核内部の流れの強さとパターンのパラメター依存性を調べることは地球科学的にも興味ある点である. また, 地震波の観測から内核が 0.3度/年 で自転より速く回転していることが示唆されている. その回転の生成メカニズムと回転角速度のパラメター依存性を調べることは興味深い.
論文投稿のための費用が当初予算よりも安価であったため次年度使用額が生じた。次年度使用分は国内外の学会発表のための旅費として使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
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